深く考え、答えのないテーマを
議論する場の必要性

 もちろん、齊藤准教授もITツールを使うなと言っているわけではないし、その威力や効果の絶大さは認めている。最近の学生はメールを積極的に活用しようとしない傾向があり、ゼミではLINEのグループで情報を伝達・共有しているという。若者にかなり浸透しているLINEのようなコミュニケーションツールを使わないわけにはいかないし、この前提条件はもう変えられない。

「ITと対面の使い分けは、素早くコンテンツを伝えるのか、時間をかけてコンテキストを共有するのかというところがポイントだと思います。情報の伝達速度はITツールでより速くなっていますが、コンテキストはなかなか伝わらないし、共有には時間がかかります。ですから、標準的な業務や日々の報告、単純な情報など、コンテンツの伝達には積極的にITツールを使い、そこで捻出した時間を使って、『コンテキストの共有』が必要な『答えのないテーマ』について、じっくり対話をする場を設ける必要がある。そろそろコンテキストをどう共有していくのかというところに軸足を移していくべきでしょう。効率性を重んじるマネージャーや経営者に、ともすると欠けているのがこの視点だと思います」

 とくに時間のムダ遣いとして問題視されている最たるものが「会議」だ。部下への伝達や部下からの近況報告だけなら、ITツールで十分。すぐにでも置き換え、できた時間をもっと有意義に使うべきだろう。

「1つの仕事に専念」ではなく
パラレルキャリアを志向

 こうした時間改革は、社員のモチベーション維持や採用という点でも大きな課題になっているという。

「最近は、働き方も1つの仕事だけに専念するのではなく、本業とそれ以外を両立させるパラレルキャリアを志向する人たちが増えてきているように感じます。こうした志向を持つ人たちには、『あれかこれか』ではなく『あれもこれも』という感覚があって、制約がある生き方はあまり好きじゃない。仕事の時間と自分の時間を常に意識している印象があります」

 その傾向を加速させているのがSNSだ。「今日は○○で農園やってます」とか「地元の人たちと○○つくってます」といった楽しそうな情報がどんどんシェアされていき、それに刺激されて「私もやってみたい!」という人たちが増えている。今、社会人を対象にしたワークショップが多くなっているのも、SNSの影響が大きい。ワークショップは、従来の働き方にとらわれない人たちが集う場所ともなっている。

 とくにITの分野では、パラレルキャリアを実践するビジネスマンの事例が紹介されることが多い。