生産性向上やワークライフバランスへの対応を推進する「働き方改革」に、業務の効率化やワークスタイルの多様化に役立つコミュニケーション・ツールは欠かせない。その役割は、働き方改革の課題や解決策などによって変わってくるはずだ。そこで、なぜ今働き方改革が必要なのか、また、企業への浸透度、改革への課題・解決策などを整理したうえで、改めてコミュニケーション・ツールの役割、活用法を考えてみたい。

なぜ「働き方改革」が必要なのか

三菱総合研究所
プラチナ社会センター 主任研究員
奥村隆一氏

 そもそも「働き方改革」は、第二次安倍内閣が掲げる成長戦略の『日本再興戦略(改訂2015)』において閣議決定された国の政策だ。働き過ぎ防止のための取り組み強化や休み方改革などを推進し、「世界トップレベルの雇用環境・働き方」を実現するとしている。さらに、2016年7月には経済4団体などが「経営トップによる働き方改革宣言」を行ない、これまでの働き方を変えようという機運は確実に高まっている。

 これに先立ち、厚生労働省では、働き方改革の課題を見える化するため、現時点までに60社に対して「分析・診断→課題抽出→解決策の提案」というコンサルティングを実施してきた。その結果なども踏まえながら、働き方改革を推進するうえでの課題や解決策を見てみよう。

 まずは労働時間について。日本人は働き過ぎとよく言われるが、実際のところはどうなのだろうか。

 厚生労働省「毎月勤労統計調査」(事業所規模5人以上)によると、この20年間、一般労働者(パートタイマー除く)の年間総実労働時間はほぼ横ばい状態。そのうち、身体や心に悪影響を及ぼすとされている「週の労働時間60時間以上」の人の割合は依然として10%弱で推移している。政府は2020年の目標としてこの割合を「5%」にすることを掲げているが、達成は難しいと見られている。働き方改革はまだ始まったばかりなのだ。

 では、企業はなぜ、「働き方改革」を進めなければならないのだろうか。