2000年にマイクロソフトとアンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)による合弁企業として誕生したアバナードは、マイクロソフトの技術をビジネスの現場に導入するシステムインテグレーションを行う企業。自社システムのクラウド化にも積極的で、すでに85%まで達している。クラウド化推進のリーダーを務めた同社のクリス・ミラーCTIO(チーフ・テクノロジー・イノベーション・オフィサー)に、自ら実践する企業基盤のクラウド化の道のりと、企業の競争力との関係について聞いた。(取材・文/ダイヤモンド・オンライン IT&ビジネス 指田昌夫)
過去3年でクラウド比率を27%を85%に
この先2年で100%へ
アバナード チーフ・テクノロジー・イノベーション・オフィサー(CTIO)アクセンチュアに16年間在籍し、同社の全世界共通のコラボレーション基盤開発の指揮を執るなどした後、アバナードに2010年に転籍。CIOを務めた後、昨年より現職。マイクロソフトの新技術を最初に導入する「アーリーアダプター」としての役割を果たすチームのリーダーを務めている。Photo by DIAMOND IT & Business
――企業へのIT導入をビジネスとしているアバナードが、3年前の時点では自社システムのクラウド利用率が27%にとどまっていたということですが、この事実を、どう感じていましたか。
クリス・ミラー(以下・ミラー) 27%というと少ない数字に見えるかもしれませんが、3年前の全てのワークロードのクラウド化率としては、多くの企業と比べて相当高かったと思います。現在ですら、一般的な企業としては悪くない数字でしょう。しかしながら、顧客企業に対してクラウドへの移行を促す立場である我々が、自らのクラウド化を進めていくことは必然でした。
この3年間の取り組みで、現在では自社のワークロードのクラウド化は85%程度にまで高まっています。残りの15%のうち、いろいろな理由で現状は自前のデータセンターにとどめておくべきデータというものがありますが、それらも含め、この先2年で100%クラウド化を果たす計画です。
――アバナードは、クラウド化せずとも、十分に先進的で効率のいいシステムを導入していたはずです。なぜ、あえて一気にクラウド化するという道を進んだのですか。
ミラー おっしゃる通り、クラウド化する前から我々は、マイクロソフトの技術に精通したエンジニアの手による効率のいいシステムを構築し、運用してきました。しかし、社会全体の情報システムがクラウドに向かうことは必然の流れである中で、クラウド化には3つのメリットがあると結論づけ、移行に着手しました。
メリットの第一は、自社のシステムをクラウド化することで得た経験、学びによって、顧客にクラウドを導入する際のスピードアップにつなげるということです。次に、クラウド化によって社内のシステムメンテナンス部門の作業負担を減らし、その業務に関わっていた要員を、よりクリエイティブな分野の仕事に回すことができるようになります。そして3番目は直接的なコストメリットです。よくクラウドのメリットというとコストが真っ先に挙げられますが、当社の場合は1番目と2番目のほうが重要でした。