「自分の枠が一杯になったら、他人の枠を買うということになるでしょうね。枠の売買といった商売が成立することになりそうです」(I氏)

 やはり、そこまでしてでもギャンブルせずにいられないギャンブル依存症の問題への対策が必要になりそうだ。そこは、今回のカジノ法案に盛り込まれた依存症対策に期待できないだろうか。

「でも、依存症を専門としている治療機関が少なすぎるんです。アルコール依存症の方は日本に約80万人いると推計されていますが、専門の治療を受けているのはうち約4万人です。薬物依存症の方は、約10万人という推計に対し、医療機関が対応できる人数は1万人以下です。ギャンブルだと、さらに少ないんです」(I氏)

 I氏によると、薬物依存症に苦しんだ人が、その地域の精神科病院のリストを手に入れ、全てに電話してみたが、受け入れてくれる病院は見つからなかったということだ。その人は幸い、自分で薬物依存症者の自助グループを見つけてたどりつくことができたが、そこに至れないまま、さらに深刻な状況に陥っている依存症者も多いことだろう。

「ギャンブルに限らず、依存症の方に『やめなさい』と説教しても意味がないんです。一緒に依存症のことを考えていき、専門治療につなぐ必要があります」(I氏)

 しかし、治療機関がそもそも「ない」のでは、それもできない。まずは、依存症の治療が社会にとって必要なことや治療の内容は、広く知られる必要があるだろう。また、十分な数の治療機関や中間施設がつくられて維持されるように、医療・福祉の報酬システムを見直す必要もある。カジノ推進のついでに盛り込まれた依存症対策には、そこまでは期待できそうにない。

「すでにギャンブル依存症者が多数いる状況の中で、日本は何の対策もしてきませんでした。それが、一番大きな問題です」(I氏)

世界で見たカジノの種類と
低所得者の入場制限

 さらに、依存症を研究している社会学者の滝口直子氏(大谷大学教授)に、海外のカジノ事情と依存症対策について尋ねると、意外な答えが返ってきた。