昨秋のリーマンショック以降、百貨店はかつて経験したことのない売上高急減に苦しんでいる。この10月でちょうど1年たつことから、関係者はマイナス幅の縮小に淡い期待を寄せていたが、売り上げ減少には歯止めがかからない。もはや通常の経費削減策では追いつかず、ついに大リストラが始まった。
「社内はそわそわしています。結構、真剣に考えている人もいますよ」(三越社員)。同社が10月から早期退職制度を拡大して、募集を始めたためだ。
従来、退職金を割り増し支給する早期退職制度はあったが、今回は対象枠と割増金額を大幅に拡大した。40歳以上の社員が対象だった適用年齢を35歳にまで下げ、地方の店舗では、年齢制限を設けずに全社員を対象にしている。
11月末までに応募すれば、通常の退職金に、勤続年数に応じた加算金があり、最大で2000万円が上乗せされる。最も支給が多い50歳前後では4000万~5000万円になるというから、そわそわもするわけだ。「削減人数を目標設定した肩たたきはしない」(三越伊勢丹ホールディングス)という代わりに、自主的な退職を促すよう、手厚いインセンティブを用意した。そのための資金は、元三越池袋店の店舗を来年1月に不動産ファンドに売却して得る750億円で賄う予定だ。
5月に前期決算を発表した時点で、三越は2009年度の営業損益が43億円の赤字となる見通しである。
三越の正社員は約6200人、なかでも中高年層が多く逆ピラミッド型の人員構成だ。伊勢丹は、正社員と有期雇用社員の比率が45対55であるのに対して、三越は正社員比率が65となる。そもそも「今後3年間で、定年退職を含めた自然減で1000人が減る」(三越幹部)予定だったが、昨秋のリーマンショック以降の百貨店事業の売り上げ急減が、時間軸を狂わせた。
三越の社員にとって悩ましいのは、今後百貨店に残ったとしても、職場環境が劇的に変わることだ。
まず、来年4月には、地方店(札幌、仙台、新潟、広島、高松、松山、福岡)は別会社化され、これに伴い給料は大幅に下がる。東京を100%とすると、75~90%という水準になる。