もし10秒沈黙したら……と考える

 さらに違う視点で考えてみましょう。
 10秒が、おしゃべりではなく、「沈黙の時間」だとしたらどうでしょうか。

 もし会話の途中でいきなり全員が3秒間黙り込んだとしたら……。誰かと話をしているときに、時計を見ながら3秒、息を止めて沈黙してみればわかると思います。その沈黙は非常に長く、気づまりな感じがするはずです。
 これが10秒にもなれば、「何、何、どうした?」と大きな違和感を覚えるはず。テレビなら、確実に放送事故のレベルです。

 私は大学で授業をする際、よくストップウオッチを使います。「5秒で印象に残る自己紹介をして」「あなたのマイブームを10秒で話して」「隣の人と30秒間、学校以外の話題で雑談して」などなど――。

「はい、ヨーイドン」とストップウオッチで計りながら話させると、学生たちは「時間がない」「短すぎて話せない」と困惑し、苦労し、お手上げになるケースもあります。しかしそれも最初のうちだけ。

 慣れてくると徐々に時間内で課題をこなせるようになっていきます。5秒なんてあっという間、10秒じゃ何も話せっこないという先入観が消えて、その時間を有効に使えるようになるのです。

 ポイントは10秒という時間の長さを意識してみること。
 意識するだけで、この10秒は価値ある時間に変わっていくのです。

 次回は「雑談の基本・3ステップ」についてお話したいと思います。

(次の更新は1月17日予定です)

※この記事は書籍『会話がはずむ雑談力』の一部を、編集部にて抜粋・再構成しています。