ほんのひと言ふた言、たった10秒でも雑談になる
1960年、静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程を経て、明治大学文学部教授。専攻は教育学、身体論、コミュニケーション論。テレビ、ラジオ、講演等、多方面で活躍。
著書は『声に出して読みたい日本語』(草思社)、『読書力』『コミュニケーション力』(岩波新書)、『現代語訳 学問のすすめ』(ちくま新書)、『質問力』(ちくま文庫)、『語彙力こそが教養である』(角川新書)、『雑談力が上がる話し方』『雑談力が上がる大事典』(ダイヤモンド社)など多数ある。
撮影/佐久間ナオヒト
「こんなのでも、雑談って言えるの?」と思うかもしれません。
でも黙ってすれ違うのではなく、目をそらして立ち去るのでもなく、ちょっと話して、ちょっと打ち解ける。たったの10秒の雑談ではありますが、これもちゃんとした会話であり、お互いの心がほぐれて場の空気も変わる、立派なコミュニケーションなのです。
ほんのひと言ふた言、たった10秒でも雑談になる。そう言われると、少し気がラクになりませんか。
「雑談が苦手」「話が下手」という人も、かなり心のハードルが下がったのではありませんか。そう、臆することはありません。雑談なんて簡単なのです。
「10秒なんてあっという間」は誤解
多くの人は「10秒なんて一瞬」「10秒なんてあっという間」と思うかもしれません。しかし、本当にそうでしょうか。10秒という時間について、違う視点で考えてみましょう。
私はテレビのコメンテーターとして番組に出演する仕事も多いのですが、どの番組でもコメントは5~10秒程度にまとめるのが基本となっているようです。ですからコメントを求められて15秒も話していると「話が長い」と思われ、ときには編集でカットされることさえあります。
確かに15秒といえば、テレビCMの1本分に当たる長さ。そう考えると「長い」気がしますよね。15秒間、ずっと1人で話し続ければ、テレビ的には――になってしまうのもうなずけます。
ということは、「10秒あればそこそこの話ができる」ということ。
加えて、「10秒であれば、相手の話も『長い』と感じずに聞ける」ということ。10秒は、雑談にとって絶妙な長さなのです。