いずれにせよ、20日のトランプ米政権誕生後の動向に注視していかなければならないが、11日の当選後初の記者会見でも従来の主張を強めていた。

 トランプ氏は「最も多くの雇用を作り出す大統領になる」と言う。彼のその極端な主張を本当に実行できるのかどうか。北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しも含めて「米国第一主義」が偏狭になれば、むしろ米国経済の足かせとなることについて米次期政権が自覚することを望みたい。

 トランプ氏がツイッター投稿でトヨタを名指しで批判した直後、筆者にニューヨークタイムズの記者から電話があった。

 昨年6月17日に掲載された本連載企画第32回「トランプ氏に敵視される日本自動車産業の命運」を読み、コメントを求めてきたのである。それは、「トヨタや他の日本車メーカーの反応はどうか、トランプ政権移行後、NAFTA見直しが実行されたらどうなるか」という問いかけで、私は次のように答えた。

「トランプ氏の本音は、米国への投資と雇用拡大を呼び込むことが狙いであると思うが、大統領就任前の立場と就任後は異なるのではないか。メキシコ生産進出は、日本各社と米各社に加え、欧州・韓国の各社が進出あるいは計画している。いわば、世界の自動車生産集積地になっており、発効から20年以上も経過し、定着しているNAFTAを見直すようなことは、米国が自らの首を絞めるもの。日本車各社は困惑と懸念しているものの、20日の政権移行後の動向を見極めていくのではないか」

 NAFTAは、米加自由貿易協定(米国とカナダ間の貿易や投資の自由化及び、紛争処理手続きに関する協定;1989年に発効)を後継拡大する形だ。1994年1月1日に米国・カナダ・メキシコの北米間自由貿易協定として発効して以来、23年が経過し定着している。メキシコに生産進出しているのは、日産・ホンダ・マツダ・トヨタに、トラックの日野・いすゞの計日本車6社であるが、米GM・米フォード・伊フィアットクライスラー(FCA)・独VWに韓国の起亜・独アウディ・独BMWと米車を含め、世界の自動車メーカーが進出あるいは計画している。

公約通り高い関税を実施すれば
日産とマツダに影響が大きい

 日本車ではいち早く日産がメキシコに1966年進出したこともあり、メキシコでの自動車生産は3工場でトップの生産台数を誇る。メキシコ自動車生産のビッグ5は、日産をトップにGM・VW・フォード・フィアットクライスラーだ。志賀俊之日産副会長と懇談する機会があり、トランプ氏の発言を尋ねてみると「日産にとってメキシコはグローバル戦略で重要な生産・輸出基地になっている。トランプ政権誕生後の動向に注視せざるを得ない」と苦い表情を浮かべていた。