2017年現在、深センの工場で働く工員は、毎月5000元(約8万円)の収入を得ている。基本給2030元に、平均的な残業代と休日手当を含めると、5000元ほどになるのだ。雇い主が住居と食事を供給するのが前提での話なので、この5000元はかなりの部分が手元に残る。世界のほとんどの国より貧しい状態から、世界のほとんどの国より豊かになる状態まで、ほぼ一世代で来た。

 出稼ぎの工員は給料の多くを親元に仕送りするが、投資と起業の街となった深センの中心部に住む若者たちはよく物を買う。市の中心部・南山にある「カフェ・インキュベータ」では、レイバンのサングラスをかけトールサイズのタンブラーを持った若者たちが、マックブックを前に英単語混じりの中国語会話をしている。

 こうした短期間での生活の変化も人類史上に例がないだろう。

その名も「ベンチャー投資マンション」。この一角には、インキュベーション・カフェというコーヒーショップにインテリジェント・ミルクティーというメニューが並ぶ意識の高さ

 急速に発展した都市。
 今も発展し続けている都市。
 そして、過去を引きずっていない都市。

 こういう特異な場所でなければ見ることができない、面白いものがあるんじゃないか。

 観光名所はなくても、テクノロジーや、その急成長と集中が生んだ独特の社会が好きな人にとって、深センには注目すべき場所がいくつかある。しかも、いずれも「地球の歩き方」ほか旅行ガイドには絶対に載っていない。

 僕はDIYとものづくりの世界的なイベント「メイカーフェア」の、深センの運営委員をしている。また、日本のテクノロジー好きと深センの街を巡る「ニコ技深セン観察会」という不定期イベントの主催をしている。次回から本格的に始まる連載「変化し続ける街 知られざる深セン」で、日本では知られていない深センの街の様子や、魅力的な出来事をレポートしていきたい。