朝鮮半島──韓国の政治的混乱をはじめ多重的リスク

 韓国で朴大統領の弾劾が成立するかどうかは予断を許さない。しかしいずれにせよ、韓国は大統領選挙を迎えることとなる。現在の与野党の大きな違いの一つは対北朝鮮政策であり、野党が勝利すれば韓国は対北朝鮮融和策に戻り、THAAD(高高度ミサイル防衛システム)導入でギクシャクしている対中関係も再び緊密化する可能性がある。北朝鮮は野党勝利の期待を込めて韓国の政情を見守っていくのだろう。

 一方北朝鮮は金正日時代の「先軍体制」(軍の優位を認め、軍人を主体とする国防委員会を国権の最高機関に位置づけた)から人民労働党本位の体制に移行し、金正恩体制も一定の安定を保っていると見られている。この間、金正恩の権力を強化するための「恐怖政治」で多数の軍・党幹部が粛清されたと伝えられており、幹部の脱北も増加している。このような状況下で北朝鮮核問題が新しい段階に来ていることに留意する必要がある。北朝鮮は米国西海岸に到達するような弾道ミサイルを開発し、核弾頭の小型化にかなり近づいていると言われており、多くの識者の間には、今止めなければ、最早その可能性はなくなるという切迫感がある。

 トランプ政権は北朝鮮問題をどう見るのか。国家安全保障関係のポストに就いた軍出身者は北朝鮮に対して強い猜疑心を持って向き合うことになるのだろうし、北朝鮮にとってトランプ政権は怖い存在と映るのだろう。最新の国連安保理制裁は石炭の輸出を制限し、北朝鮮の外貨収入を8億ドル程度圧縮しうるという意味で実効性がある。しかし中国が本気で北朝鮮に圧力をかける方針に転換しない限り、北朝鮮を真の非核化交渉に引き出すことはできないだろう。北朝鮮問題は米国新政権の方向性、米中関係の行方、韓国政治の混迷といった多重的な要因を織りなしていく。

EU──政治とBREXITの不確実性

 2017年にEUではオランダ、フランス、ドイツで選挙が行われる。オランダ自由党やフランス国民戦線、ドイツのための選択といった極右政党が政権をとるといった可能性は高くはない。しかし、政権中枢にいる中道右派政党が反移民・難民、反EUを主張する極右政党に引っ張られていく現実は避けようがなく、EUの求心力は当面減退していくのだろう。

 EU内の政治の流れと相まってBREXITは混乱を脱しきれないだろう。最高裁でEUへの通告に議会承認が必要であると最終的に判断されても議会がこの段階で通告阻止に動くとは考えられない。しかし、英国が望むような移民制限とEU市場への従来と同様のアクセス維持は望むべくもない。今後、離脱に伴う新しいEUとの経済関係、EUの一員として結んでいた国際的な権利義務関係の更新等の作業は複雑かつ膨大であり、通告から2年でこれらの作業が完結するとは考えられない。このような将来に対する不確実性が英国の政治経済の大きな混乱要因となる。