ロシア──プーチン戦略の先鋭化

 トランプ政権の布陣は米ロ関係改善へのアプローチを感じさせる。また、トランプ政権の中心課題の一つは過激主義イスラムとの戦いであり、米ロ協調の余地は多い。特にシリアにおいてイスラム過激派組織「イスラム国」(IS)を駆逐するためアサド政権、これを支援するロシアと協力していく方向に舵を切る可能性は高い。ロシアに対する制裁についてもトランプは批判的であり、ロシアとの関係を核軍縮やエネルギー・経済面を含めた取引に置き換えて考える傾向が出てくる。ただロシアは米国に匹敵する核戦力を持ち軍事予算も増え続けている国であり、NATO(北大西洋条約機構)との対峙という基本的構図が簡単に変わっていくとは考えられず、米ロ関係改善にも一定の限度があろう。

 ロシアは米ロ関係改善をロシアの戦略を進める好機と考えるだろう。ロシアは欧州での孤立後、中国との連携を軸として米国中心の秩序を突き崩す戦略を組み立ててきたが、中東ではシリアでの軍事作戦やイラン、サウジとの関係も含め相当影響力を強め、日本との関係も16回にわたる安倍首相との首脳会談で象徴されるような強い関係を模索してきた。今後とも中国との関係を軸とした対抗軸を維持しつつ、欧州との関係調整に進むだろうし、日本との経済協力関係を迅速に拡大することを望むだろう。

中東──関係国の思惑の錯綜とテロリスクの拡大

 ISはシリア・イラクから駆逐されていくだろうが、中東外でのテロのリスクは引き続き高い。難民が殺到してきた欧州や戦闘員が帰国するインドネシア・フィリピンなど東南アジア諸国などに加え、米国内でもホームグロウンのイスラムテロの危険性は増す。

 中東全般についてはスンニ派サウジアラビアとシーア派イランの対立は尖鋭化していくのだろう。また、地域の大国トルコはエルドアン政権下で強権的な統治が続くのだろう。他方、イラク戦争の後遺症は大きく、米国の軍事力介入の可能性は限られ、側近に親イスラエル派がおり、人権などの理念より現実重視の傾向のあるトランプ政権の下でイスラエルやサウジアラビアとの関係が修復されていく可能性が高い。

 更には米イラン関係の冷却化(核合意を放棄することは考えにくいが核関連以外のテロ支援などとの関係でとられている制裁の強化は考えられる)は進むのだろうし、一方ロシアや中国の中東諸国との関係がおしなべて強化されていくのだろう。このように大国を含む関係国の思惑が複雑に錯綜し、当面情勢は混沌としたままと見るべきだろう。