だがそこでの意見は、その限られた場でのマジョリティを占めるものの、一旦そのコミュニティを出ると、世間からは全くズレた意見になっているようなことは多々見られる。さらに悪いことに、それに対する反対意見もまた感情的なものが多く、建設的な議論の妨げになっている。異なる意見や価値観が建設的に意見を交換しあって、新しいアイディアを出すことがますます難しくなっているのだ。

感情的反論は無視
建設的反論は真摯に対応

 こういったことを防ぐには、現在のところ、各人が自分のバイアスに自覚的になるしかない。ツイッターなどに、事実を迅速に書き込むのは良いが、自分の意見を書き込むならば、時間をとってよく考えて書き込む。レスバトルや炎上にならないために、感情的な表現や揚げ足取りは控える、という行動が必要だ。

 他者からの感情的反論に対して、自分も感情的にレスするのは論外だが、だからといってブロックするのもまた論外だ。それは少数ながら存在する「建設的な反論」をも封殺する、と宣言しているようなものだからだ。そうした行為そのものも感情的レスポンスの一つなのだ。取るべきは。感情的反論は無視し、建設的反論に対しては真摯に議論する、という対応である。

 こうやって考えると、SNSやネットで発言するのは、実は非常に難しいことだとわかるだろう。筆者自身も自戒すべきことと認識しているつもりだが、気がつくと、上記のバイアスに絡め取られてしまうことも多い。

 本来、他人に与える影響力が大きい人ほど、これらの点に気をつけるべきだが、最近の政治家などの発言を見ると、とても気をつけているとは思えないことが多い。筆者は、これらのバイアスへの「無自覚さ」が危険なポピュリズムの温床になる可能性を危惧している。

(モナッシュ大学マレーシア校スクールオブビジネス ニューロビジネス分野准教授 渡部 幹)