前回、国債費として支出される額の多くは、国債で吸収して国庫に戻すことが可能だと述べた。

 これが可能なのは、国債の償還費や利払いのほとんどが、国内の国債保有者に対するものであるからだ。そして、こうなるのは、これまでの日本の国債は、ほとんどが国内で消化されてきたからである。

 この点が、諸外国の場合との大きな違いだ。諸外国の場合には、国債が非居住者に保有される比率がかなり高い。【図表1】に示すように、経済危機後はほとんどの欧米諸国でこの比率が3割を超えている。アメリカの場合には、5割近い。このように、国内消化比率が高い点で、日本は他国と大きく異なる。

 日本の国債の大部分が内国債であったことは、国債の発行時に海外に頼る必要がないというだけでなく、資源配分の観点からも、大きな差があるのだ。内国債の場合には、国債の利払いや償還によって国庫から支出される額は、国外に流出することなく、国内に滞留するのである。したがって、国全体として使用しうる資源の量が直接的な意味において減少するわけではない。

 つまり、財政赤字の拡大や国債残高の累増がもたらす影響は、国債が内国債である限り、直接的には、国と民間の相対的な関係に留まるのである(ただし、間接的な影響まで含めれば、そうとも限らない。財政赤字の拡大は、利子率を変化させ、資本蓄積に影響を与えることによって、経済全体のパフォーマンスに影響を与える。もっとも、これまでの日本で投資が減少したのは、財政赤字拡大のためではなく、世界経済の構造変化によって日本の製造業の競争力が低下したことによる)。

永久国債は
財政赤字問題を解決するか?

 したがって、少なくとも国債費に関する限り、財政赤字の問題は、国内で適切な対処を行なえば、克服できる。

 例えば、償還した分を全額国債で回収できれば、事実上、償還期限が無限に長い国債(永久国債)を発行しているのと同じになる。永久国債とは、イギリスでコンソル公債(consols)として発行されていたものだ。