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東京証券取引所と大阪証券取引所が、近く経営統合に向けて協議に入ることが明らかになった。
両社は持ち株会社を設立したうえで、株式など国内現物株の取引で9割以上のシェアを占める東証が現物取引所を、先物などのデリバティブ(金融派生商品)取引で5割のシェアを握る大証がデリバティブ取引所を担うかたちに再編する案が有力だ。
ところがその舞台裏で、両社の思惑はすれ違っている。というのも、東証には「デリバティブを捨てる気などなく、むしろ自前で強化したい」(東証幹部)との思いがある。現に、デリバティブの取引量を増やすために夜間取引を開始、取引時間を大幅延長することを検討中だ。
一方の大証も現物株を捨てる気などなく、だからこそ「2010年10月に新興市場のヘラクレスとジャスダックを統合したばかり」(大証幹部)。つまり、統合を目指すにしても両社は「同床異夢」で、機能を分担した再編に踏み切れるのかは微妙な情勢だ。
ただ世界を見渡せば、取引所の再編はものすごいスピードで進んでいる。10年10月にはシンガポール取引所とオーストラリア証券取引所が統合で合意。11年に入ってからもドイツ取引所と、NYSEユーロネクストが経営統合に向けた話し合いを進めているほか、ロンドン証券取引所グループと、北米で複数の取引所を運営するTMXグループも、近く合併することで合意している。
こうしたなか、東証や大証の存在感は明らかに薄くなっており、09年以降、東証はアジア1位の座を2年連続で奪われている。
むろん、これまでも手をこまねいていたわけではない。東証は3月に入って、NYSEとの提携検討で同意したと発表。大証も米ナスダックを運営するナスダックOMXグループと共同で、新市場を創設する検討を始めたばかりだ。
だが、「いずれも単なる提携にすぎず、明らかに世界的な再編に乗り遅れている」(東証幹部)ことは否めず、両社の統合はもはや待ったなし。にもかかわらず、統合話が遅々として進まないことに業を煮やした「金融当局が、背中を押した」(同)模様だ。
とはいえ、具体的な統合作業に入れば、主導権争いが起きるのは火を見るよりも明らか。しかも、東証が08年度、09年度と2期連続の最終赤字に陥っていることが大きなネックとなる。
というのも、両社が統合する際には、統合比率を計算するうえで東証の上場が前提だが、赤字続きではそれも厳しい。そもそも東証自身も2月の取締役会で、「上場を目指すかどうか自体、意見が割れている」(東証幹部)ようなありさまで、きわめて不透明だ。さらに両社はシステムが違い、これを統合させるのも「大きな困難が予想される」(大証幹部)。
こうした問題山積のなかで統合話は順調に進むのか。ただ、時間をかけているうちに世界の取引所との差がさらに開くことだけは間違いない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史)