>>(上)より続く
もし京子さんが離婚に同意したら、どうなるでしょうか?生前、義理の両親と京子さんは養子縁組をしていたので、夫は京子さんに離縁するよう求めてくるでしょう。夫は一人っ子なので、京子さんが反対しても、いまだに義父名義になっている実家の土地建物を相続し、京子さんを追い出し、女を招き入れるはずです。しかし、過去の言動を振り返ると夫や女が義母の面倒を見るとは思えず、「介護放棄」の危険すらあるのです。
さらに、夫は過去に脳梗塞で倒れたこともあり、現在も血圧が高いので医者からは「いつ何があってもおかしくはない」と言われているうえ、昨年、泥酔状態で駅のホームから転落し、両足を複雑粉砕骨折しました。車両に轢かれずに済んだのは不幸中の幸いですが、事故をきっかけに京子さんは「万が一、夫が亡くなったらどうするのか」について腰を据えて見つめ直すきっかけになったようで、「何があってもお義母さんを最後まで看取ろう」と覚悟を決めたのです。
「お義母さんにも、息子(夫)をあんなふうに育ててしまったという罪はあるかもしれませんが、最期まで安心して暮らせる場所を確保してあげたい。本当は息子(夫)と一緒に余生を過ごせたら良いのですが……」と苦しい心情を吐露します。
京子さんにとって義母と一緒に暮らしていた25年は、実母と同じ期間。義母は実母と同じような存在なので、京子さんは夫に体良く利用されていることを知りながら、それでも義母を見捨てるわけにはいかないそうです。
夫の死後、義理の両親の介護
どう判断するか想定することが大事
私は相談の現場で妻側から、「もし夫と離婚もしくは死別したら、義理の両親をどうするのか」について問われたとき、「義理の両親の世話を『死別時』に打ち切りたいのなら『姻族関係終了届』という方法がある」とアドバイスすることがあります。ただ、本当に提出するケースは非常に少なく、京子さんのように思い止まるケースが圧倒的に多いのが実情です。
ここまでは、妻が義理の両親の介護を続けるか否かの選択を迫られたとき、対照的な決断を下した2人の話を取り上げてきましたが、代表的なエピソードを5項目にまとめたので、人生の岐路でどうすべきかの判断材料として参考にしてください。
1.すでに義理の両親の介護を始めている場合、これから介護が想定される場合
すでに妻が義理の両親の介護を担っている最中に夫が亡くなった場合、妻が介護を続けたくないのなら、代わりの人間に頼まなければなりませんが、夫の親戚筋もそれぞれの事情(子どもの教育にお金がかかるので経済的に無理、配偶者の親の面倒をみているので肉体的に無理、兄弟姉妹間の仲が悪かったので心理的に無理など)で説得できない可能性もあります。