トランプはヒトラーか

 日本にはたいてい悪口を言うのに、この時だけは日本を羨ましがっている。それほど黴菌が怖いのだと指摘した上で、佐藤はトランプをアドルフ・ヒトラーになぞらえる。

 実際、トランプは選挙集会で支持者に右手を挙げさせ、ヒトラー式敬礼を促したような場面もあったという。

 トランプにとって批判や敵対者は“黴菌”なのだろう。それほどに恐怖の対象であり、「ノー」と言い続けなければならない存在なのだ。

 たとえば、オバマに対する攻撃などは偏執的だった。その出生疑惑と彼がムスリムであるというデマをしつこく流したのである。出生証明書に宗教を記載する欄などないのだが、トランプは「オバマの出生証明書の宗教欄にはイスラムと書かれているかもしれない」とも言ったりした。

 こうした例を挙げた上で佐藤は、ヒトラーも黴菌恐怖症だったという説があるとし、セバスチャン・ハフナーの『ヒトラーとは何か』(赤羽龍夫訳、草思社)の次の一節を引く。

「ヒトラーにあっては、彼の性格、彼の個人的本質の発展とか成熟ということが全然みられないのである。彼の性格は早くから固定してしまった。より適切にいえば、とまってしまった、ということなのだろう。そして驚くべきことに、ずっとそのままで、何かがつけ加わるということはないのだ」

 これはトランプも同じであり、ハフナーはヒトラーを「自己批判能力が完全に欠如している」と断定して、さらにこう続ける。

「ヒトラーはその全生涯を通じてまったく異常なまでに自分にのぼせ上り、そもそもの初めから最後の日まで自己を過大評価する傾向があった。(中略)ヒトラーはヒトラー崇拝の対象だっただけでなく、彼自身がその最も初期からの、そして最後までつづいた、最も熱烈な崇拝者だった」

 佐藤はヒトラーをトランプに置き換えても違和感はないとしているが、超大国アメリカに「ナルシスト政権」が誕生してしまった。

(評論家 佐高 信)