ポジティブな材料が見当たらない!
呆然とニュースを眺める関係者たち
「これからどうなるか、株式市場の見通しはかなり不透明です。投資家向けに市場予測のレポートを作ろうにも、ポジティブな材料が見当たらない。何より、福島原発の放射能漏れや計画停電が報じられる度に会社から自宅待機命令が出るため、仕事になりません……」
こう苦笑するのは、ある大手証券会社に勤めるアナリストである。
3月11日、東北・関東地方を中心に未曾有の大地震が日本列島を襲った。この東日本大震災は、最大の被災地である東北地方に大津波や原発事故などの深刻な被害をもたらし、発生から10日あまりで2万人近くの死者・行方不明者を出す大惨事となった。
大地震発生後の混沌とした週末が明けた14日、日本の株式市場は底抜けの下落に見舞われた。保険金の支払い負担急増が予想される保険会社、製油所で大規模火災が発生した石油会社、原発を手がける電機メーカーなどを中心に幅広い銘柄が売られ、日経平均株価は終値ベースで、前営業日の1万250円台から9600円台へと急落した。
さらに翌15日、政府が福島原発の放射能漏れの可能性を発表すると、恐れおののいた投資家たちは、蜘蛛の子を散らしたように株式市場から逃げ出した。パニック売りが起きた結果、日経平均は前日から1000円近くも急落し、8600円台へと落ち込んだのである。これは、1987年のブラックマンデー、そして世界を出口の見えない大不況へと追い込んだ2008年のリーマンショック時に次ぐ、歴代三番目の下げ幅と言われている。
世界景気の先行きにも不透明感が強まり、ニューヨークをはじめとする世界の株式市場も、一時顕著な下げに見舞われた。日本株買いの主力だった外国人投資家からは、「日本が震源となって再び金融危機が起きるのではないか」という声まで上がったほどだ。
「もう、呆然とニュースを見ているしかなかったですね。投資家には面と向かって言えませんが、リーマンショックのときと同様に、今回のような不測の事態が起きると、我々にアドバイスできることなど、何1つないのです」と、冒頭のアナリストは語る。