米国民は「7割が肥満」だった!肥満の“新しい定義”とは?Photo:PIXTA

 先日、米国務省が「肥満」を含む健康上の理由でビザの発給を制限するとのニュースが注目を集めた。このほか米国政府は、半ば強引に製薬大手2社と抗肥満薬の価格引き下げで合意するなど、肥満を背景とした疾病負担の削減に躍起となっているようだ。

 これまで、米国民の3人に1人は体格指数(BMI)30以上の肥満だといわれてきた。しかし体重と身長で計算するBMIでは、筋肉量が多いアスリートも肥満となるため実態を反映しているとは限らず、定義の見直しが行われていた。

 今年1月、世界76以上の医療機関の専門家で組織するランセット糖尿病・内分泌学委員会は、肥満の新しい定義として以下の二つを提案した。

(1)従来のBMI評価で「肥満」に入り、かつウエスト周り、もしくはウエスト身長比や体脂肪測定などの身体測定値が一つ以上、高値。またはBMI=40以上の「BMI肥満」。

(2)BMI上は肥満とはされないが、二つ以上の身体測定値が高値の「体組成肥満」。

 米マサチューセッツ総合病院の研究チームが、この最新の定義で米国の成人30万1026人(平均年齢54歳、女性61.0%、白人53.2%)の身体測定データ(2017年5月31日~23年9月30日分)を解析したところ肥満に分類される人が、従来基準の42.9%(12万8992人)から68.6%(20万6361人)へと大幅に増加することが明らかになった。

 このうち、7万8047人(25.9%)はBMI上では肥満と見なされない体組成肥満だった。見た目は標準体型でも体組成上は黄信号というわけ。興味深いことに体組成肥満は、従来いわれていた「貧者の肥満」とは異なり、高学歴、高収入の男性に多く、加齢とともに増加することも示された。

 体組成肥満は日本でいう「隠れ肥満」で、内臓脂肪がたまっている状態。アジア人種がなりやすく、BMI肥満と同様に糖尿病や心血管疾患のリスクが高い。当然、死亡率も高く、研究者は「体重計の数値より、体組成計の数値」を重視するよう述べている。

 体組成肥満の対策は、とにかく運動をして筋肉量を増やすことだ。ついでに今年のクリスマスには、精度の高い体組成計を自分にプレゼントしよう。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)