相続税に納得できない!「不服申し立て」より現実的な「3つの交渉術」とは【専門家が解説】写真はイメージです Photo:PIXTA

納税時に「税務署の判断は妥当なのか」と納得できないケースは珍しくない。そんなとき、「不服申し立て」という制度があるが、現実は厳しい。今年8月の国税庁統計によれば、納税者の主張の一部または全部の認容率は、税務署への再調査の請求5.7%、国税不服審判所への審査請求20.0%、国を訴える訴訟4.8%にとどまる。こうした状況を踏まえ、より現実的な対応策となる税務調査での交渉術について、不服申立制度の仕組みとあわせて解説する。(税理士・岡野相続税理士法人 代表社員 岡野雄志)

適切に申告したはずなのに
「申告額が少ない」と指摘されることも

 相続税の申告で、「税務署の判断に納得できない」という状況は珍しくない。相続税の計算は財産ごとの評価方法が多岐にわたり、事実認定も複雑であるため、納税者と税務署の主張に食い違いが生じやすいからだ。

 実務で見られる代表的な争点として、下記の2つが挙げられる。

(1)名義に関するもの
 預金が誰の資金によるものか、誰が管理していたかといった事実関係の確認が必要で、納税者と税務署の認識が食い違うことがある。

(2)贈与の認定に関するもの
 日常の資金移動が贈与に該当するかどうかは、判定が難しい場合がある。生活費や教育費などは非課税だが、使途や管理状況によって扱いが異なるため、贈与となるか否かの認定が争点になりやすい。

 これらの問題は、納税者が「適切に申告した」と考えていても、税務署の調査で異なる見解が示されることにつながりやすい。