自民党は「世襲制限」を掲げる方針の民主党に対抗し、国会議員の世襲制限について、次期衆院選から国会議員の親族が同一選挙区から連続して立候補することを禁止する方向で調整に入った。正式決定されると、小泉純一郎元首相の次男進次郎氏などが自民党公認では立候補できなくなる。

 しかし、この世襲制限案は自民系世襲候補が無所属で立候補した際、党県連が支援できるなど抜け道が多い。自民党は別のやり方で民主党の世襲制限に対抗すべきではないだろうか。そこで、前回に引き続いて、「政治家の世襲問題」について論じたい。特に、自民党の人事システムである「年功序列(当選回数至上主義)」と「世襲問題」を関連付けて考えてみる。

世襲議員の問題は
政界の「入口」だけではない

 現在の「政治家の世襲問題」に対する批判は、主に政界への新規参入のハードルが高くなり、外部にいる優秀な人材が政界に参入しづらくなるというものだ。ただ私は、世襲問題の本質はここにはないと考えている。

 世襲議員は自民党国会議員の約4割弱である。確かに他の民主主義国家と比べて世襲議員比率は圧倒的に高いが、それでも約6割強は世襲なしで国会議員となっている。外部から絶対に政界に参入できないわけでもない。むしろ、麻生内閣の閣僚の6割(18人中11人)を世襲議員が占めているように、世襲議員のほうが政界でより指導的立場になりやすいことが問題ではないかと考える。

 前回指摘したことだが、80年代以前の首相はほとんどが世襲議員ではなく、逆に90年代以降は首相のほとんどが世襲議員である。これは単に世襲議員の数が増えたためではなく、自民党の年功序列システム(当選回数至上主義)の完成と関係がある。

 当選回数至上主義とは、国会議員の当選回数に応じて、閣僚、副大臣、国会の委員会、党の役員といった、さまざまなポストを割り振っていく人事システムである。自民党議員は当選5-6回で初入閣までは横並びで出世し、その後は能力や実績に応じて閣僚・党役員を歴任していく。これは、約300人もいる自民党の国会議員の全員が納得できるように党の役職を割り振るのは簡単ではないため、「当選回数」というわかりやすい基準を設けたということだ。このシステムは自民党政権の長期化に伴って固定化し、「当選回数」が国会議員を評価する絶対的な基準となった。

 このシステムでは、若くして国会議員に当選すると、それだけ党内での出世に有利となる。そして、強固な選挙区(地盤)、政治資金(かばん)、知名度(看板)を引き継ぐ世襲議員の初当選年齢は若い。例えば、小泉純一郎氏・30歳、橋本龍太郎氏・26歳、羽田孜氏・34歳、小渕恵三氏・26歳である。ちなみに、史上最年少・自民党幹事長だった小沢一郎氏は27歳初当選だ。