誰もが犯したくない仕事でのミス。なくすには「脳」の働きにカギがあった

要約者レビュー

 上司に頼まれていた仕事をすっかり忘れていた、重要な資料に誤りがあるのを見落としていた、指示されたとおり資料を作ったはずなのに、全く違うと叱られた、など仕事において大なり小なりミスはつきものだ。そのようなミスの発生原因と対策について、「脳」という視点から解き明かすのが本書『仕事のミスが絶対なくなる頭の使い方』である。

『仕事のミスが絶対なくなる頭の使い方』
宇都出 雅巳
238ページ
クロスメディア・パブリッシング
1380円(税別)

 本書『仕事のミスが絶対なくなる頭の使い方』では、ミスには記憶に関するメモリーミス、注意力に関するアテンションミス、「伝えたつもり」「わかったつもり」になってしまうことで生じるコミュニケーションミス、そして誤った判断を下すジャッジメントミスの四種類に分類している。そして興味深いのは、それらのミスを「起きてはならない」ではなく、脳の特性上「起こってしまうもの」と想定しているという点だ。人の記憶力には限界がある。誤った情報を記憶してしまったり、思い込みによって記憶が上書きされたりすることもある。また「早めに頼む」と指示しても、相手によって「早め」が指すのが一時間以内なのか今日中なのかは異なる。そうした前提を踏まえずに自分の思うままに仕事を進めようとしたり一方的に意見を伝えたりするのでは、同じようなミスを何度も繰り返してしまうだろう、というわけだ。

 仕事の精度を高め、円滑に進めるためにはどのような考えが必要かを学ぶのもよし。部下が陥りやすいミスのパターンを知り、どう指導すればいいのかに思いを巡らすのもよし。

 ミスが起こる脳の仕組みについて、役立つ知識が満載の一冊である。 (下良 果林)

本書の要点

・脳の一時記憶保管庫「ワーキングメモリ」の容量は小さく、直ぐに新しい情報に上書きされてしまう。記憶のミスは、脳の限界が原因で「忘れる」前提で対策を講じる必要がある。
・視野が狭くなり、視野の範囲外のことを見落とすミスを防ぐには、注意すべき項目を事前に決めておく「フレームワーク」の手法が有効である。
・脳には「速い思考」「遅い思考」の二つの思考回路が存在する。「速い思考」は優秀な自動プログラムのように直感的に判断を下すが、誤っている可能性があるため、意識的かつ論理的な「遅い思考」で検証するプロセスが必要である。