自分の適職を知りたいのも、「このままこの仕事を続けていていいのだろうか、他に選択肢はないだろうか」という個人の根源的な疑問から発されているのかもしれません。この場合、単純にその人の適性診断をするだけでは、プロとして付加価値を出したことにはなりません。ヒトとしての悩み・課題に踏み込むことが求められるのです。職場を離れたいのは、いったいなぜなのか。その人なりの悩みに踏み込んで解決の糸口を探る必要があります。

 多くのキャリアコンサルタントは、コトの課題を深掘りして、ヒトの課題・悩みにまでは踏み込みます。むしろ、ヒトに対する興味が強いため、この部分は得意な方が多いと思います。

 ところが、“最善を尽くす”という観点から言うと、まだこれでも足りないのではないでしょうか。さらに原因を追究すると、問題の根源が組織にある場合も多いと思います。「高みを目指してキャリアアップするために転職したい」という相談を受けた時に、「なぜ、この会社では満足のいくキャリア形成ができないのだろうか」という疑問も抱くべきです。

 その会社でもっとしっかりとしたタレントマネジメントができていて、明確なキャリアパスを提示するコトができていたら、何も転職などを考えなくても、その会社の中で十分キャリアを形成できるかもしれない、と視点を変えて考えることも必要です。

 たとえば「今の職場を離れたい。なぜなら上司との人間関係がうまくいっていないから」と相談を受けた場合、もしかすると同様の問題が他の職場でも発生しているかもしれないと考え、組織風土改革、組織コミュニケーション改革といった全社運動につなげていくことが必要なのかもしれないのです。

 さらに視点を広げてみましょう。自社で起きている人間関係の悪さやコミュニケーション不全は、こと自社に留まるものではなく、広く社会でも起きている問題なのかもしれません。不寛容で冷淡な社会の風潮、ギスギス社会の縮図として職場の雰囲気の悪さがあるのかもしれません。こうなると問題の根源は社会にあるということになります。

 良き医師が診察室を飛び出して、広く社会に働きかけることで、多くの患者の健康を守ろうとするように、キャリアコンサルタントも従来の対個人サービスといった狭い枠を超えて、組織開発や社会改革にまで踏み込んでこそ真のプロフェッショナルということができるのではないでしょうか。ヒトの領域、ましてやコトの領域に留まって限定的なソリューションを提供するコトに甘んじているキャリアコンサルタントは、国家資格保持者としての真のプロフェッショナルとは言い難いと思います。

 そこに、社会人材というコンセプトとの接点があります。