社会が大きく変化していく中で、今後、自分が行っている仕事の社会的価値をどこに置けばいいのかが問われてきます

時代のトレンドは今
「Post-truth」

 2016年のユーキャン新語・流行語大賞で年間大賞に選ばれた言葉は、「神ってる」。一方、イギリスの「オックスフォード大学出版局」の辞典部門が毎年発表している「World of the Year 2016」の流行語大賞に、「Post-truth」が選ばれました。

「Post-truth」を直訳すれば「ポスト真実」。postとは、「~の後」と言った意味なので、「真実の後」という意味になります。エンターテインメント化した日本の流行語大賞に比べるとわかりにくいのですが、世界の動向を真摯に表した言葉だと思います。

「Post-truth」とはどういう意味でしょうか。オックスフォードの辞書によると「客観的な事実が重視されず、感情的な訴えが政治的に影響を与える状況のこと」とあります。

 真実や事実よりも個人の信念や感情が優先されてしまい、政治的決定が行われていく危険な状況と私は考えます。それを後押しするのは「衆愚」です。

 さらに「Post-Truth」では、一種のリンゲルマン効果、もしくは社会的手抜き的な無責任状況も生まれると思われます。

 リンゲルマン効果とは、フランスの心理学者リンゲルマンが綱引きの実験から導き出したものです。1対1で綱引きをするとき、多くの人は100%の力を出そうとします。この綱引き対決で2対2、3対3というように人数を増やしていくにつれ、個々人は力を抜き始める。これも一種の衆愚です。「もたれあい」と言ってもいいかもしれませんが、「自分が頑張らなくても他の人が何とかしてくれる」「全体の中で自分の力はたかが知れている」と皆が考えるわけです。

「自分だけが極論を主張する候補に投票したって、まさかあの候補は当選しないだろう」と皆が思うようになり、現政権や支配階級に対する鬱憤晴らしのつもりで投票すると、結局その候補が当選してしまう、といったことが起こります。これも綱引きの事例と同じです。