ライフネット生命保険㈱代表取締役社長。1948年、三重県美杉村生まれ。上野高校、京都大学法学部を卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。生命保険協会の初代財務企画専門委員会委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て同社を退職。その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務める。2006年にネットライフ企画株式会社設立、代表取締役就任。2008年に生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社に社名を変更、同社代表取締役社長に就任。主な著書に『百年たっても後悔しない仕事のやり方』『生命保険はだれのものか』『直球勝負の会社』(以上、ダイヤモンド社)、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『「思考軸」をつくれ』(英治出版)、『ライフネット生命社長の常識破りの思考法』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。
未曽有の大震災が日本を襲った。被災された方々には衷心よりお見舞い申し上げます。この状況下で、今、私たちは何を為すべきか。5つの提言を行いたい。
第1は、政府を信頼することである。
私は現在の政権を必ずしも支持している訳ではないが、今は政局を論じる時ではない。与野党挙げて政府を盛り立てるべきだと考える。何故なら、福島原発事故に象徴されるように、現下のわが国は時間との戦いを強いられているからだ。そうであれば、現体制でベストを尽くす以外の方法はない。市民は、原発事故に付随する放射能汚染に神経を尖らせている。外国の大使館や企業が退避を勧告する動きも不安を募らせる要因となっている。少し、冷静になって考えてみよう。米国であれどこの国であれ、福島原発の現況について、東電や霞が関以上の情報を持ち得るだろうか。また、外国で何か事件が勃発した時、日本の外務省が最初にやることは、邦人の退避や渡航自粛勧告を出すことである。それを想起すれば諸外国の動きに動揺することはない。ごく特殊な例外を除けば、自国民の安全を第一に考えない政府はないというのが歴史の教えるところである。私たちは政府の公表するデータを信じて行動すべきである。
第2に、被災を免れた私たちは、出来る限り通常通りに仕事を行い、普通の生活を送るべきである。
自粛を続ければ、経済活動が落ち込むだけである。もちろん東電の管内にあっては、節電に協力することは言を俟たないが、節電を除いてはむしろ消費活動を活発化することが望まれる。復興に必要な原資は、経済活動を通じてしか調達出来ない。例えば、東京には、ローソクで営業を続けるレストランがある。キャンセルすれば、食材が無駄になるばかりか売り上げも落ちて税金も払えなくなる。こういったレストランをみんなで満席にすることが、今、私たちに出来る最大の復興支援であることを銘記したいものである。