人口減の影響が出始め、ただ不動産屋を運営するだけでは存亡の危機に立たされる地場不動産屋。しかし、中には地道な取り組みで街を活気づけたり、入居者が殺到する物件作りに成功している事例もある。
人口減で存亡の危機!
中小不動産会社の苦境
昨年10月、2015年の国勢調査の確定値が発表された。日本の総人口(外国人を含む)は1億2709万4745人となり、1920(大正9)年の調査開始以来、初めて「人口減」に転じた。社会保障・人口問題研究所による2012年1月推計では、中位推計で総人口は2060年に8674万人に減り、参考推計で2110年には4286万人と、今の日本人の約3分の2が「消える」。将来的に人口は減少の一途と推計される中、商売が住む人の数に依存する、賃貸物件を扱う不動産会社の不安は増すばかりだ。
特に、大手不動産会社の系列に属さない地域密着型の中小不動産会社は、生き残れるかどうかの瀬戸際に、今後立たされることになるだろう。
そうした危機感に背中を押され、今、地域で独自の取り組みを繰り広げる独立系の不動産会社が増えてきている。
東京・渋谷から田園都市線の急行で15分とアクセスがいい溝の口駅(神奈川県川崎市)。駅前に本店を構える不動産会社「エヌアセット」の取り組みは、じつにユニークだ。昨年11月下旬には店舗前の駐車場に色とりどりの季節の野菜が並んだ。同社が年2回主催し、地元の農家が育てた野菜を売る「野菜市」だ。約550品目が3時間で完売するほどの人気ぶりだった。