日本人の約8割が欲しいと思っている持ち家。アベノミクスによる地価上昇や住宅ローンの超低金利も、持ち家への後押しとなっている。しかし、不動産鑑定業界で取り扱いトップを誇る三友システムアプレイザルの井上明義相談役は「持ち家は下流老人の始まり」と断言する。
明るい材料はゼロ!
住宅価格は上がらない
――これだけ低金利だし、家賃を払い続けるよりは家を買った方が資産形成にもなる。そんな考えが常識的だと思っていましたが…。
家を持つことに明るい材料は何もありません。日本は既に人口減時代に突入しています。世帯数も当然減っていきます。
一方で空き家はものすごい勢いで増えている。都心に点在する一等地は例外ですが、それ以外、特に地方の空き家は救いようがないと言っていい。お父さんががんばって駅から遠い場所に家を建てたはいいものの、売りたくなっても駅から遠い上に設備も老朽化して売れない、そして借り手もつかない、といった話ばかりです。
家を建てる30代頃はまだまだ元気で、将来子どもが巣立って夫婦2人暮らしになるとか、体が動かなくなって掃除や炊事もままならなくなり、ホームに入らなければならなくなるという未来は想像しにくいでしょう。だから郊外に広い家を買ってしまいがち。高齢者になってはじめて、家が資産になるどころか、始末に困る代物であることに気づく人が多いのです。「資産形成になるから」と無理をして建てた場合、家だけが残って現金が十分残らないでしょう。これでは下流老人になってしまいます。
中古住宅にきちんと値段が付く欧米と違い、日本は圧倒的に新築信仰の国です。そもそも日本では買った瞬間に住宅の価値は下がり、一戸建てでは築20年ほどでゼロになってしまう。こんな状況が続く限り、住宅=資産という図式は成り立ちません。むしろ、お金を生まず、税金ばかり取られるという、「マイナスの資産」になる危険性が高いのです。
今後、人口が減って行くのだから、土地価格も上がるはずがありません。長年、日本人が常識だと思ってきた持ち家信仰は、今やまったく的外れな考え方になってしまったのです。