東日本大震災によって多くの自治体が壊滅的な被害を受け、統治・行政能力を喪失している。また、仮に力が残っていたとしても、それは被災者支援に充てるべき段階にあり、個々の自治体による自力での復旧・復興は極めて困難な状態にある。地方自治体の「真の復旧・復興」はどのように行われるべきなのか。以前から厳しい財政状態に陥っていた地方自治体の問題を指摘していた北海道大学の宮脇淳教授に、非常時の今こそ問われる国や県の役割について話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)
基礎自治体だけでの問題解決は極めて困難
国や県が直接的に復旧・復興活動を
――東日本大震災によって、多くの市町村が壊滅的な被害を受けている。もはや個々の自治体による自力での復旧・復興は困難な状態にあるが、今後、県や国はどのように支援を行っていくべきか。短期的、中長期的視点からお教えいただきたい。
まず前提として現在の日本には、大災害が起きたとき、つまり非日常的な状況になったときに、財政も含めて国と地方がどのような関係性を持って事態に取り組むかを体系的に定めた法制度がないという問題点がある。要するに、災害の際の救助法などを個別に定めた法律はあるが、総合的に定めたものがない。
今回も東京消防庁などが被災地に向かっているが、それも体系的に法律で定められていれば、総合的に活動が行えたはずだ。したがって、中長期的な課題として、災害時のトータルな対応についての法制度を国と地方の関係において定めることが重要である。
それを踏まえたうえで短期的な視点から述べると、もはや今回の災害は基礎自治体だけで対応できるレベルではない。被災した多くの市町村、つまり基礎自治体が、地域を残せるかどうかの問題にまで直面している。そうしたなかでは、国や県が道路などのインフラ復興に対して直接的に地域へ資金を投入できる仕組みをとらなければ、地域がさらに疲弊する恐れがある。
北海道では日常的にも北海道開発局が直接的に基礎自治体へ事業を行っており、平常時はこれが二重行政だと批判されることもある。ただ、今回のような非日常時には、国と県が地域の社会インフラ対して直接出ていき、最低限の整備、復興を財政面も含めて行っていかなければ地域経済・生活の機能不全が長期化してしまうだろう。
そしてその際、国は今後の国のあり方、地方経済や生活のあり方を早急にグランドデザインとして描かなければならない。今回の地震により、東京への一極集中、東北で言えば仙台に一極集中していることのリスクの高さが露呈した。これは状況が落ち着いてくればくるほど国民全体に共有されてくる。「100年に一度の危機」といわれるが、それに備え、国土形成のあり方も含めて、国が直接地域に対して復旧・復興に取り組んでいかなければならない。