中東・北アフリカの政情不安で、原油価格が高騰している。WTI原油先物は3月2日、約2年5カ月ぶりに1バレル=100ドルの大台を突破。原油高はあらゆる企業に負担増となるため「このままでは業績への影響は免れない」と、せっかく好調に転じた景気が再び悪化してしまうことを懸念する声も聞かれる。

原油高より食糧価格のほうが問題だ

 しかし、カブ知恵のアナリスト・藤井英敏さんによると「原油高により輸送コストが上がり、さらに上昇スピードが加速している食糧価格のほうが遥かに問題」という。

 「中東・北アフリカの問題は混乱が収まりさえすれば解決する。いずれにせよ彼らは原油を売るしか食い扶持がないのだし、かつての石油危機とは事情が違う。しかし、食品価格の問題は、アジア全域に拡大する恐れがある」からだ。

 実はここのところの食糧価格高騰は半端ではない。米・小麦・トウモロコシなどの主要穀物の国際輸出価格は、昨年同時期より70%以上も上昇。FAO(国連食糧農業機構)が発表している世界食料価格指数も236ポイントで、算出以来の過去最高を記録した。

 「原因は昨年の天候不順で、世界的に収穫が激減したこと。今年も去年並みやそれ以下だと非常に困ったことになる。特に新興国で物価上昇が続き、インフレを懸念した政府が金融引き締めに走ると、景気悪化→成長鈍化は避けられない」と藤井さん。

 そうなれば、中国や東南アジアの高成長に乗って、業績を回復させてきた日本企業も影響は免れない。現在の株価はそこまでの悪材料は織り込んでいないようにも見えるが、こうした懸念があることも頭の片隅に入れておきたい。

★有効な対処法は!?

[株]恩恵を受けるのは商社などだが…
商品価格の上昇が株価にプラス作用するのは、資源株、鉱山株、商社株などだが、多くはマイナスの影響を受けてしまう。

[為替]高金利通貨の急落に注意
地政学リスクのため日本円とスイスフランが買われている。逆にリスク回避が強まると豪ドルなど高金利通貨は急落も。

(文/渡辺一朗)


※この記事は3月21日発売の月刊マネー誌『ダイヤモンドZAi』2011年5月号に掲載。5月号の特集は、「スマートフォン&アジア関連株」の2大バブルで株価10倍を狙え!