ダイヤモンド社刊
1785円(税込)

「いよいよ意思決定の準備は整った。満たすべき条件は検討し、選択肢はすべて俎上に載せ、得るべきものとリスクは天秤にかけた。何を行なうべきかは明らかとなった。しかし、まさに決定の多くが行方不明になるのが、このときである」(ドラッカー名著集(1)『経営者の条件』)

 ドラッカーは、「そのとき、行なうべき意思決定がけっして愉快なものではなく、容易なものでもないことが急に明らかになる」という。とうとうここで、決定には判断と同じくらい勇気が必要であることが明らかになる。

 薬は苦くなければならないという必然性はない。しかし、一般的に良薬は苦いものである。

 ドラッカーは、ここで絶対にしてはならないことがあるという。すなわち、もう一度調べようという誘惑に負けてはならない。それは臆病者の手である。ドラッカーは、臆病者は勇者が一度死ぬところを1000回死ぬという。

 とはいえ、意思決定の意味について、完全に理解しているという確信なしには実行を急いではならない、ともいう。

 10回のうち9回は、不安に感じていたことが杞憂だったことが明らかになる。しかし、10回に1回は、重要な事実を見落としていたり、初歩的な間違いを犯していたり、まったく判断を間違っていたりしていたことに気づく。

「10回に1回は突然夜中に目が覚め、シャーロック・ホームズのように、重要なことはバスカヴィル家の犬が吠えなかったことだと気づく」(『経営者の条件』)