家の近所にある何でも相談できる診療所、子どもの病気を専門に見てくれる小児科のクリニック、内科や外科など複数の診療科を備えた病院。地域にはさまざまな形態の医療機関がある。

 フリーアクセス制をとっている日本では、健康保険証1枚あれば、規模の大小にかかわらず原則的にどこでも好きな医療機関を受診できる。そのせいか、ふだん私たちはあまり意識することなく、医療機関のことをまとめて「病院」と呼びがちだ。

 だが、法律では「病院」と「診療所」を区別しており、同じような治療でも、どこで受けたかによって医療費に差が出ることもある。「病院」と「診療所」は、どのような基準で分けられているのだろうか。

入院用のベッド数が
20床以上あると病院

 医療の安全を確保し、効果がよく分からない民間療法などから国民を守るために、医療法では病気やケガの治療を行える施設は、原則的に科学的根拠に基いた治療を行う「病院」と「診療所」に限定している。

 とくに「病院」に対しては、高度な医療を行えるように、医師をはじめとしたスタッフの人数、備えるべき設備などについての基準を設けているが、「診療所」との明確な線引きになっているのが入院用のベッドの数だ。

 医療法第一条の五では、ベッド数20床以上だと「病院」で、19床以下またはベッドがない施設を「診療所」と定めている。ただし、同じ「病院」のカテゴリーの中でも、ベッド数に応じて医療費が異なる仕組みになっている。

 とくに、最近、患者の自己負担に大きな差をもたらしているのが、医師の紹介状を持たずに病院を受診した場合の特別料金で、そのラインとなっているのが400床と500床以上の病院だ。

400~500床以上の大病院が
特別料金の対象になる

 限りある医療資源で効率よく適切な治療を行なうために「診療所は日常的な病気やケガの治療や慢性疾患の経過観察」「病院は高度な手術や検査、化学治療、放射線治療」など、国は医療機関の機能分化を進めている。