日本ビクターとケンウッドの統合から1年。JVC・ケンウッド・ホールディングスの業績悪化に歯止めがかからない。10月末の中間決算では、今期2度目となる業績の下方修正を行ない、通期は売上高4300億円、営業損失35億円(当初見通しより55億円減)となる見込みだ。元凶は、中核の4事業(車載機器、家電機器、業務用システム、音楽ソフト)が営業赤字となったことだ。
そこで浮上したのが、音楽ソフト事業を売却し、残り3事業に経営資源を投下する「事業の選択と集中」のシナリオである。すでに、複数の事業会社に売却を打診している模様だ。
もっとも、それが、当座のキャッシュを生むことはあっても、抜本的な再生につながることはありえない。売上高の約4割を占める家電機器事業(中間期で100億円の営業赤字)の再構築策はいっこうに描けていない。ディスプレイ事業の売上高は、統合時の1400億円から、今期末には300億円弱まで大幅に縮小される。
さらに、ドル箱だったビデオカメラ事業が欧州地域の競争激化により、営業赤字に転落したことも頭痛の種だ。今後、デジタルカメラに搭載された動画機能の進化は避けられず、静止画はデジカメ、動画はビデオカメラという棲み分けが成り立たなくなり、ビデオカメラ戦線は激化するばかりだ。
11月1日、吉田秀俊・ビクター社長が持ち株会社の社長補佐へと“降格”となり、ケンウッド出身の河原春郎・ホールディングス会長がビクターの社長業務を兼務することになった。音楽ソフト、ディスプレイ、ビデオカメラと、ビクター側の継承事業が窮地にあり、ビクター出身者のモチベーションは低下する一方だ。河原会長は、会社の存続をかけたリストラを断行する一方で、彼らのモチベーション維持にも努めなければならない。ケンウッド、音響のデノンを立て直した“再建請負人”は、かつてないほどの難しい舵取りを迫られている。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)