もし目標のインフレ水準が達成されるまで「消費増税をしない」と言えば、人々に前向きな影響をもたらせたでしょう。その方針を続ける限り、人々はインフレを受け入れやすくなります。そうすれば彼らはお金を使うようになり、マネーの流れも活性化するに違いありません。

──FTPLを政策として実行した場合、成功すると思われますか。

 それが成功するかどうかは、政策当局者が将来の民間の意識を変えられるかどうかに懸かっています。ただ、非常に難しいことであることは確かです。

──仮にインフレが発生した場合、物価上昇率が3%、4%などとターゲットより行き過ぎてしまう危険はないのでしょうか。

 インフレ対策については、中央銀行も財政当局も経験があり、何をすべきか、知っているはずです。例えば、政策金利の引き上げや財政改革(歳出抑制など)です。

 超低金利低インフレからいつまでも脱することができないというのも決していいことではありません。予期しない物価上昇などで急な調整を迫られたときに、打つ手がなくなるからです。

──FTPL自体は1990年代からあったにもかかわらず、昨夏の米ジャクソンホール会議で急速に注目を集めました。

 日本においては、安倍晋三首相の存在が密接に関係しているでしょう。政治的な状況、ということです。

 ただ、私の論文に対する強い反響がその他の多くの場所であったことには驚きました。

 この理論(FTPL)の詳細な議論は、私の論文に引用したマイケル・ウッドフォード氏(米コロンビア大学教授)の長い論文に収められています。しかし、その内容には極めてテクニカルな議論が多く、マクロ経済の専門家向けに書かれたものでした。

 ジャクソンホールでの講演はランチタイムでした。スライドは使えないし、電源やコードもない状況でテクニカルな論文の説明をしなくてはなりません。私には30分間の講演を言葉だけで行う必要がありました。