約1000万キロワット足りない、
真夏の電力
「使っていない電化製品のコンセントは抜いておこう」
「夜中の照明は電気のムダ」
「とにかく節電を」
――3月11日に発生した東日本大震災。そして“想定外の”原発事故。
あの日以降、日本のいたるところで、こうした情報が流れている。
節電の心がけそのものを否定するわけではない。一人一人のささやかな節電が積み重なって大きな成果になり、このところの計画停電が見送りになっていることも事実だ。
しかし、冬は過ぎ、春が来て、やがて夏が訪れる。いまだに電力供給の完全復旧の見通しが立たず、大幅な電力供給不足がほぼ確実視されている夏がやって来る。
真夏のピーク時の電力需要は5500~6000万キロワットとも予想されるが、それに対して確保できるのは4650~5000万キロワットにとどまる見通しだという。
約1000万キロワットも不足するというのだ(図1)。
夏の停電は、
命の危険にさらされることもある
夏と冬とでは電力不足に対する危機感の度合いが大きく違う。ひとたび停電になれば熱中症などが多発する可能性も高い。
40度近くまで気温が上がることもある真夏の東京。 突然の停電で、空調が止まった窓のないエレベーターに数時間、取り残されてしまったら……。命の危険にさらされる可能性もある。
もう一つ、残念なお知らせがある。
冬場とは比べ物にならない電力需要にさらされる真夏の都会では、これまでのようにいくら電化製品のコンセントを抜いても、いくら神経質になって部屋の電灯を消して回っても、いくらコンビニが深夜営業を取りやめても、「停電を回避する」という目的においては、ほとんど意味がないのである。
だからこそ夏が来る前に、私たちは改めて「本当に効果のある節電対策」を身につけて おかなければならない。
そのポイントとなるのが、本連載のサブタイトルにあるいかにして「ピーク時」の電力需要を下げるかなのだ。
「ピーク時」、この言葉がキーになるのである。 今夏、制御不能な大規模停電を防ぎ、計画停電を回避するために企業は何ができるのか、何をすべきなのか。
この連載では、こうした意外と知られていない電力需給の基礎的な事実について、しっかりと、かつ繰り返し述べるとともに、私の専門分野でもある「エネルギーコスト削減」という見地から、「今、すべきこと」について緊急の提言をしたいと思う。