省エネルギー対策と混同している、
的外れな政府の節電対策
ただ問題なのは、国がこれまで推奨してきた節電、省エネルギー対策はトンチンカンで この夏に向けての対策としては、ほとんど意味のないものばかりだということ。
国が唯一とったエネルギー削減の政策としては、1979年に施行され2008年に改正された「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(省エネ法)がある。
だがこの省エネ法は最大のお題目が「CO2排出量の削減」にあるため、ピーク時の電力需要低減という計画停電回避対策にはほとんど寄与していない。
省エネの項目には当然「電力」も挙げられてはいる。しかしその内容は、今直面している現状への効果を考えると、的外れだ。
この的外れの「省エネルギー」対策を、「節電対策」と勘違いしているケースもある。年間一定量以上の電力を消費する小売業や工場などの事業者はすべて、省エネ法に基づいた対策を講じなければいけないことになっているのだが、そのためには国家資格を持つ担当者を置く必要がある。
しかし実質的にはそのための有資格者を置くのも難しく、罰則はあっても申告義務程度なので、多くの企業で単なるコンサルタントの食いものになっていて、効果もほとんど上がっていないのが現状。そのよう背景のなかで出てきているのが以下のような「節電対策」だ。
「人のいない部屋の照明は可能な限り消灯する」
「使っていない家電製品のコンセントは抜いておく」
「エレベーター、エスカレーターの使用をできるだけ控える」
「冷蔵庫は詰め込みすぎず、無駄な開閉をやめる」etc.
これらは経済産業省が、震災後の厳しい電力需給状況に対応するために企業などに推奨している省エネルギー対策に掲載されている項目だ。しかし実際のところ、これらの対策はほとんどが的外れと言っていい。繰り返すが、重要なのは「ピーク時の電力需要を抑える」ことだ。
「人のいない部屋の照明は可能な限り消灯する」
「使っていない家電製品のコンセントは抜いておく」
この2つは、ピーク時にやらないと意味がない(逆に言えば、ピーク時以外に一生懸命 やっても、計画停電の回避はできない)。
「エレベーター、エスカレーターの使用をできるだけ控える」
ピーク時に動いていれば、同じく効果はない。99人が使用を控えても、1人が乗っていれば電力は使われる。「ピーク時に、稼働しない」のであれば、意味はある。逆に、早朝や夜中は止めていなくてもいい。
「冷蔵庫は詰め込みすぎず、無駄な開閉をやめる」
これも同じ。ピーク時にも電源が入っているものだから、無駄な開閉を数回減らした程度では、真夏のピーク時電力を減らすことは難しい(かなり遠回りだという意味で)。
やらないよりはやったほうが節電にはなる。しかし「今」「今夏」に必要とされている計画停電回避という命題において、どれもその効果はほとんど期待できないのである。
そんななか、菅政権が電気事業法27条に基づいて「電力使用制限令」を発動する方針を決めた。これは夏場、電力需要のピークとなる昼間の時間帯の消費電力抑制を狙ったもので、今求められる対策として、ようやく少しは理にかなったものが出てきたと言えよう。