1つめは銀行から住宅ローンを借りられなくなるということ。銀行だけではないのだが、お金を貸してくれる業態では、なぜか「固定電話のない人は信用ができない」という伝統的なものの見方をするらしく、少なくとも将来お金を借りる予定のある人は、はやまって固定電話を解約すると困ったことになる。

 2つめに、子どもが少なくとも携帯を持てるくらいの年齢になるまでは、電話がないと困るということだ。子ども同士で連絡をとる場合に、親の携帯の番号を教えるわけにもいかないからだ。

 そして3つめに、大災害時に携帯では連絡がつかないという問題がある。家に固定電話があったほうが家族や親戚は安心する。

 とはいえ、どれも対処できない理由ではない。子どものいる家庭でも、スマホやパソコンで050番号の別の電話を受けられるようにして、それを子どもに使わせれば、家に固定電話は要らなくなる。災害時に備えて、災害掲示板のような公的な仕組みを家族同士で使うことを予め決めておきさえすればいい。ファクスだってインターネットで送受信するサービスがある。

 この050番号のIP電話に加入することは、銀行に関しての対策にもなる。050から始まるNTTのIP電話サービスに加入して、「これが我が家の電話番号です」と言い張れば、さすがに天下のNTTの番号に非を唱えることは銀行でもしづらいだろう。

 そもそも固定電話に入っている人が迷惑電話をブロックするために使うのも050で始まるIP電話だし、会社でも050電話を使うケースが増えている。IP電話に対する認知が広がっているから、昔のように頑なに「市外局番のある電話番号のない方にはお金をお貸しできません」という銀行ばかりではないのだろう。そうしておいて、その050番号を固定電話で受けるのではなく、スマホで受信すればいいのである。

シニアの9割が解約しないのは
料金への不満がないから?

 しかるに、固定電話を解約しない人がなぜこれだけ多いのか。

 突き詰めて考えると、シニア以上の世帯で9割の家庭が固定電話を解約しないのは、結局、月々の電話代が目くじらをたてるほど高くなくなったからではないか。昔は家族に長電話をする人が1人いるだけで、月の電話代が簡単に1万円を超えてしまったものだ。それと比べて今の電話代のレベルなら、緊急連絡のための投資だと割り切っても大した話ではないというのが、大半の固定電話保有者の本音ではないだろうか。

 そういう人に1つだけアドバイスがある。実は、私は自分の会社を創業して8年目に、会社の固定電話をなくしてしまった。会社のことなので、家族からは一切反対がないし、オーナー社長なので社員も反対しない。固定電話を止めるのは簡単だった。それでわかったことがある。

「電話がかかってこないと邪魔をされずに、自分の時間を楽しめますよ」

 そう。固定電話を持つか止めるかは、実はお金の問題以上に、外からの電話で自分の時間を中断されないという、「プライスレスな体験」の問題であると思う。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)