第一原発1号機から4号機までの沈静化は
東電しか対応できない

 このような現状に照らして考えれば、焦眉の急が損傷した福島第一原発の1号機から4号機までを一刻も早く沈静化させることにあることは言を俟たないであろう。これら4機の原子炉と使用済みの燃料棒を保管するプールを確実に冷却し、一日も早く安定した状態に復帰させることが何よりも重要である。なぜなら、これら4機がほぼすべての放射能汚染の発生源だからである。福島第一原発の状況に最も通暁しているのは、疑いもなく事業主体である東電である。そうであれば復旧についても東電に頑張ってもらう他はない。

 東電には当然のことではあるがさまざまな負荷がかかっている。首都圏の電力供給問題や、第一原発に近接する市町村等への補償問題、加えて、今回の大事故がなぜ未然に防げなかったのか、東電に過失はなかったのかなど、厳しく東電の経営責任を追及する向きも多い。もちろん、いずれも避けては通れない重要な問題ではあるが、極論すれば、まず当面は東電のすべての経営資源を、第一原発の沈静化に向けて集中投下してもらいたい。そして政府・市民もそれを鼓舞すべきである。

 とりわけこのような未曾有の危機に際しては、人間はそういくつもの対応が器用に取れる動物ではない。戦線を拡げれば拡げるほど肝心の対応策が後手後手に回るのは目に見えている。何よりも福島第一原発の沈静化こそが一丁目一番地であり、政府や私たち市民は、東電がこの問題に専心できるような枠組み作りに試行錯誤を重ねて行くべきであろう。

 その意味では、東電の社員や社宅に対する嫌がらせのような、人間として最も恥ずべき行為がごく一部にではあるが見られたことは、まことに残念である。これらの行為は市民社会の唾棄すべき主敵である。

 東電の経営責任の追及や事故原因の解明は、第一原発が安定してからでも決して遅くはない。もちろん、その中には、このような緊急時に経営トップが病気で入院していたにも拘らず、取締役会が機能しなかったガバナンスの問題も、当然含まれてよいと思われる。常識的に考えれば臨時取締役会を開いて後任もしくは代行者を選任すべきであっただろう。