日米両政府の避難区域に対する認識はほぼ一致

 次に放射性物質の拡散に対する市民の不安にどう対処するかという問題がある。まず原発に近接する避難区域の問題から始めよう。事故発生当時、この種の原子力災害に関しては最も経験豊かなノウハウを持つアメリカ政府が、原発から半径50マイル(80km)圏内に住むアメリカ人に対して避難勧告を出したが、その根拠は圏内の放射線量などの実測データに基づくものではなく、アメリカの原子力規制委員会(NRC)の仮想シナリオに基づくものであったことが後日明らかにされた。

 これは、当初は十分な情報が必ずしも得られるわけではない外国政府の初期対応としてはごく普通の判断だと思われる。その後NRCのヤツコ委員長は、「現在得られているデータは、安全距離が約20マイル(32km)であることを示し続けている」と述べている(4月9日、朝日新聞朝刊)。このように現時点では、原発避難圏内について日米両国政府の間に大きな認識の齟齬はないが、よく考えてみれば、同じデータに基づく専門家の判断が同じ結論になるのはけだし当然であろう。

 避難区域については、その変更も含め、政府が専門家の意見を尊重しつつ実測データに基づく根拠を明確に示して市民の不安を取り除くように引き続き努力を傾注すべきである。