前回紹介した電気街「華強北」は、さまざまの(多くは低性能な)パチモノや奇妙な新製品であふれている。一方で深センはドローンの世界最大手メーカー・DJIのような、世界レベルの新興メーカーが本拠地を置く場所でもある。どういうものが開発されていて市場で見ることができるのか、華強北の市場をより深く歩いてみる。(チームラボMake部 高須正和)

パチモノ家電ショップの深セン国際電子城。看板にはさまざまな言語で「卸売りします」と書かれている Photo by Yuichi Hirose

 僕は「ニコ技深セン観察会」というコミュニティを主催している。深センで勃興している新しいものづくりの現場を、有志が現地集合・現地解散で見て、触れて、参加する集まりだ。ほとんどは日本人だが、過去にはマレーシアや台湾からも参加者がいる。

 今回は、これまで観察会メンバーが見つけて、買ったものなどを中心に、前回(「深セン電気街の凄み、アキバやシリコンバレーを超える開発力」)紹介した“山寨家電”の可能性と限界、そして具体的な買い物ガイドについて紹介したい。

「山寨」は山岳要塞という意味で、中央の目の届かないところで勝手なことをする梁山泊のような事柄を指し、転じて自由に(多くは安直に)開発された製品を指す。雑に作った、という意味では英語の“Hack(ハック)”にやや似ている言葉だ。

山寨アクションカメラ
750円と3000円でどう違う?

 2016年に参加した鈴木涼太氏は、工学系の大学院生で、自らもハードウェアスタートアップに協力し、Webmoという製品を開発している。彼はさまざまな電気製品の分解を趣味にしていて、僕ほか観察会の参加者は、ガジェットを彼に渡して分解レポートのネタにしてもらったりしている。

 前回も紹介した深セン国際電子城は、パーツではないコンシューマエレクトロニクスを売っているビルだ。粗悪でもとにかく安いパチモノ家電を世界中、多くはアジア・アフリカの第三諸国からバイヤーが仕入れに来る。僕らはここでいくつものアクションカメラを購入した。一番安いものは50元(750円)。日本でラーメンを食べるぐらいの金額だ。

 アクションカメラはGoProが切り開いたジャンルで、広角で撮りっぱなしにできて、ヘルメットやスケボーにつけられる、比較的安いカメラだ。これまでのカメラメーカーが製品化していなかったところをうまくついた製品で大成功したが、ここ数年は世界中で「似たような製品」が出てきている。その市場形成の経緯は、ウォークマンを源流とする携帯音楽プレーヤーみたいなものだ。