深センの中心部からほど近い「大芬油画村」(Dafen Oil Painting Village)は、8000人の画家が集まった絵画の村だ。ホテルの受付や部屋などに飾られる複製画の60%がこの大芬で「生産」されているが、近年はオリジナル絵画を中心に年間700億円の売り上げを生み、新しい画家がデビューする街でもある。世界の工場深センのそばに、なぜ絵画の村ができたのか。大芬の街を紹介する。(チームラボMake部 高須正和)
8000人の画家が住む街
大芬(ダーフェン)油画村
深センの中心部から電車で小一時間行ったところに、「大芬(ダーフェン)油画村」という場所がある。昔は実際に村だったのだろうが、今は完全に拡大した深セン市街地に飲み込まれている。駅を降りたら案内の看板があり、訪ねるのは難しくない。
0.4平方キロという、東京ディズニーランドより狭い面積の中に1100の画廊と8000人の画家が住む。あらゆる路地で画工が絵筆を握って作業していて、街は絵の具のにおいで満ちている(写真1~4)。
1980年代、黄江という香港の画商が少数の職人と共に、ここに工房を開き、急成長する香港、深センの各地に向けて複製画を売り始めた。ホテルもレストランも絵を必要とする。ダ・ヴィンチのモナリザやゴッホのひまわりのような「みんなが知っている絵」の複製をホテルは必要とする。それも、印刷ではなくて絵の具の盛り上がりが見える複製画の方が重宝される。
大芬の複製画は世界中にも輸出され、現在も世界の複製画の60%は大芬で「生産」されている。
「複製画の聖地」として注目された大芬も、深センの街の変化につれて別の顔を見せている。もちろん今も多くの複製画が描かれている。だが、大芬油画村の公式サイトによると、中国の所得が上がった今も、大芬の絵画は年100万枚以上「製造」され、2015年時点で42.5億元(約700億円)以上の売り上げを上げている。半分ほどは海外に輸出されるそうだ。