電力制約がとくに厳しいのは東日本だ。西日本は、(少なくとも当面の間は)厳しい電力制約はない。だから、復興の過程で、電力多使用産業が西に移り、省電力型産業が東に移れば、東日本の電力不足はかなり緩和される。
以下に述べるように、電力多使用産業とは、製造業である。だから、東北の工場を東北に再建するのでなく西日本に再建し、他方で東日本にはサービスを誘致するのが合理的だ。
こうした方向付けは、個々の企業の復興に大きな影響を与えるので、できるだけ早く政府が全体プランを示す必要がある。
製造業の付加価値あたり電力使用量は、
サービス産業の3.4倍
電気事業連合会の「2009年度分 電力需要実績」によると、用途別の電力量は、【図表1】のとおりだ(10社計)。
この表で、「電灯」は一般家庭、「電力」は比較的小規模の工場などにほぼ対応する。特定規模需要(自由化の対象となっている大口需要)は、「業務」と「産業」に分類される。「業務」は事務所・ビル、デパート、卸小売業、飲食店、学校、ホテル・旅館、病院、劇場・娯楽場、その他サービス(福祉施設等)であり、「産業」は製造業、農林水産業、鉱業、建設業である。
特定規模需要の計は5,283億kWhだが、そのうちの2,608億kWhである大口電力については、業種別の内訳がわかる(【図表2】。なお、ここに示す製造業の内訳は、すべてを網羅するものではない)。この表から、大口電力の81.4%が製造業であることがわかる。
この数字を参考として、「電力」と「産業」の和の8割が製造業であり、「業務」が広義のサービス業であるとしよう(以下では、これを「狭義のサービス業」と区別して、「サービス産業」と呼ぶことにする)。すると、総電力消費中のシェアは、製造業が34.7%、サービス産業が23.5%ということになる。