なかでも注目されるのが、(1)の拡張的財政政策だ。(1)は経済理論ではどう評価されえるのか。開放経済下の財政・金融政策の効果を分析するのに用いられる代表的な理論が「マンデル=フレミング・モデル」である。開放経済とはモノ、おカネ(資本)が国境を越えて自由に取引される世界である。

 同モデルによる拡張的財政政策の効果を文章で表せば、次のようになる。大幅減税&インフラ投資(財政支出の拡大)は、国内需要を増加させ一時的にGDPを増加させる→財政赤字をファイナンスするために、米国の実質金利が上昇する→資本の移動が自由な変動相場制のもとでは、より有利な投資機会を求めて、金利高の米国に海外から投資資金が流入して外貨をドルに変えるため、ドル需要が増えドル高になる→ドル高の結果、輸出減少・輸入増加となり、GDPは減少して元のGDP水準に戻る。つまり、為替レートの変化が、拡張的財政政策の効果を打ち消してしまう。

 2番目の保護主義はどうか。トランプ大統領は中国からの輸入品には45%、メキシコからの輸入品には20%の関税をかけ、関税収入を使って国境に壁を築くとぶち上げている。輸入関税については同書の初版が詳しい。それによれば、輸入関税をかけると輸入関税の対象製品の輸入が減少する→輸入の減少によって、為替市場では輸入業者が輸入のためにドルを売って外貨を買う需要が減るためドル高になる→ドル高によって、輸入が増加し関税による輸入削減効果は小さくなる。

 3番目の移民の制限を評価するには、経済成長の理論が役に立つ。経済(GDP)成長率=労働投入量(総労働時間)増加率+労働生産性上昇率に分解できる。ざっくり言えば、より長い時間働くか、労働者の数が増える(労働投入量の増加)、あるいは労働者1人当たりの生産量が増えれば(労働生産性上昇)、その分、GDPは成長するということだ。

 では、労働生産性の上昇は何によってもたらされるのだろうか。それは(1)資本蓄積(いわゆる設備投資)、(2)労働力の質の改善、(3)低生産性部門から高生産性部門への資源の再配分、(4)技術進歩によってもたらされる。とすれば、移民の制限は労働投入量の増加率を低下させる、加えて有能な移民も制限されれば、(2)、(4)にも悪影響を与える可能性がある。このため、移民の制限は、「中長期」では経済成長率を下げる方向に働く。