金融緩和の限界が明らかになった今、安倍政権の経済ブレインである浜田宏一・米イェール大学名誉教授が注目しているのが“シムズ理論”だ。日本は何をすべきか、クリストファー・シムズ・米プリンストン大学教授を直撃した。(「週刊ダイヤモンド」編集部 大坪稚子、竹田幸平)
──日本銀行が2%の物価目標を掲げて「量的質的緩和」を実施してきましたが、継続的な物価上昇は起こっていません。今、何をすべきなのでしょうか。
日本は、金融政策と併せて、財政政策を実施していくことこそが必要です。超低金利の状況において、中央銀行は財政拡大のサポートなしに、(量的金融緩和による)資産買い入れを遂行すべきではありません。
中央銀行が財政政策の支えを求める際は、債務の大きさを判断の基準とするのではなく、インフレ(物価上昇)を条件とすることが欠かせません。言い換えれば、インフレ目標を達成するために、財政を拡大するということです。
──日本銀行が取ってきた量的質的緩和は効かなかったということですか。
金利がゼロ近傍になると、量的緩和だけでは、物価に影響を与えることはできないということです。
──日本国民にはインフレに対するアレルギーがあり、容易に理解が得られるとは思えません。
インフレとは、(預金者から最大の債務者である政府へ実質的に所得を移転させる意味で)税金です。ですから、本来的に人々にとって人気のあるものではありません。政府には国民に対して、政府債務の一部をインフレによって軽減させていく狙いがあるのだと、明確に示す政治的勇敢さが求められます。