燃費データ不正に揺れ、現在日産傘下で復活を目指す三菱自動車。果たして再建は叶うのか。元三菱自社員でコンサルに転じた著者が、真の経営課題を炙り出す(写真はイメージです)

「風土の問題」だけなのか?
不正が繰り返される不思議

 筆者が三菱自動車を辞めてから17年が経った。同社に在籍したのはわずか4年弱という期間だったが、私にとっては軽自動車の販売戦略を策定するなど、経営感覚や現場感を形成する貴重な経験となった。

 昨年4月20日、三菱自動車の軽自動車の燃費データ不正に関するニュースが流れた。「過去の苦境からせっかく立ち直ってきたのに」という残念な気持ちになった。私は過去に接点を持ったビジネスパーソンにレポートを不定期で配信している。そのレポートは、三菱自動車の相川哲郎前社長にも送っていた。レポートを送信しようとメールを書いていたまさにそのとき、「三菱自動車社長 会見」という文字が私の目に飛び込んできた。

 今回の不正で窮地に陥った同社は、カルロス・ゴーン氏率いる日産自動車の傘下に入り、現在、待ったなしの再建に取り組んでいる。今年1月末、2017年3月期の連結営業損益が10億円の黒字になる見通しを発表し、日産流の経営効率改善効果が出始めたようだ。しかし、当初の見通しより損失幅が縮まったとはいえ、最終損益は2020億円という巨額赤字。余談を許さない状況が続く。

 過去のリコール隠しや今回の燃費データ不正によって、同社は多くの顧客に迷惑をかけてきた。私も一時籍を置いた者として、大変申し訳なく思っている。不祥事を繰り返してしまう企業の本質とは何なのか。その原因に迫りながら、読者諸氏が企業経営に活かせるヒントを紹介することで、ささやかな償いとしたい。

 最初のリコール隠しが発覚したのは、2000年6月のことだった。社員の内部告発により、リコールにつながるような不具合を20年にわたって隠蔽していたことがわかったのだ。政府による立ち入り検査などを経て、三菱自は再発防止策を発表した。ところがその4年後、再度リコール隠しが発覚した。2件の死亡事故につながるような不具合であり、車両の構造的な問題が原因となっていた。それから12年が経ち、今回は燃費データの改ざんという新たな不正である。