三菱自動車は第三者委員会による調査報告を発表した。その会見の席上、日産自動車(元開発担当副社長)から転じた山下光彦副社長は、三菱自の体質改善策として日産流の“コミットメント経営”を導入し、組織のフラット化に取り組むことを明らかにした。しかし、上意下達の社風が色濃い三菱自の性格にそれが馴染むかどうか不透明だ。(ジャーナリスト 井元康一郎)
三菱自はこれまで幾度となく
第三者委員会を立ち上げてきた
燃費不正問題で危機的な状況に陥っている三菱自動車は2日、第三者委員会による調査報告を発表した。報告の中には、「燃費審査のための走行抵抗値の測定方法を正しいものにすべきだ」と新人社員が具申しながらも、社がそれを黙殺していたといったひどい内容のものまで含まれていた。
製造業として、これほどの赤っ恥はないであろう。
三菱自は過去にリコール問題が起こった時も、幾度となく外部の有識者からなる第三者委員会を立ち上げた。直近では2013年にエンジンのオイル漏れに関するリコール(メーカーによる無償回収・修理)に消極的だということで国交省から厳重注意を食らったときの改革諮問委員会がそうだ。
「今まで何度も不祥事を起こした末に今回の騒動。致命的だという思いは彼らにもあるでしょうに、それでも第三者委員会を立ち上げないと、自分たちの何が悪かったのか調査もできなかったのか」
ライバルメーカーの開発部門幹部はこう呆れ顔だ。
益子修会長は「開発に対する経営陣の関心が薄かった」と自省の弁を口にした。だが、もともと社長は技術屋だろうと間接部門畑であろうと、開発の実態を細部まで把握することが仕事ではない。会社の目標を決め、どういう精神でその目標を達成していくかという方針を大局的に示し、人心を掌握して会社全体を動かしていくのが役目である。
開発に関心が薄かったというのは、「自分は本当に不正を知らず、やったのは手下なのだが、トップを務めてきたのが私である以上、当然全責任を負うのだ」という、巧妙な自己弁護の心理が働いていると受け取られても仕方がない。
そもそも、先に述べた新人による意見具申を経営陣の誰が「問題なし」とした責任者なのかといったことも判然としていないのだ。トップが本当にそのような体質との決別を表明するのなら「これまでは社内の論理を重んじてルールを軽視してきた。それを改める」と言うべきだろう。