スクープは東海道新幹線と同じ
事業の「幹」を見極めて投資する

──投資をすべきところがスクープにあったということですね。

 はい。JR東海の名誉会長、葛西敬之さんの新書を担当したことがありました。そこで葛西さんが経営を担う立場になり、優先的に取り組んだのが「新幹線」の強化でした。JR東海の根幹は何かといったら、東海道新幹線なわけです。安心、安全で、速くて快適な大動脈を築く。老朽化していれば新しくする。その幹を太くすることを優先して取り組んでいった結果、今も高収益の体質が続いているのです。

──「週刊文春」としても東海道新幹線に当たるのがスクープだと。

『「週刊文春」編集長の仕事術』
新谷 学著
ダイヤモンド社 1512円(税込)

 ええ、そこですよ。「週刊文春」の特殊性うんぬんというより、この考え方はあらゆる企業に通じると思います。富士フイルムのように幹を捨てて、切り替えられるほうが珍しい。

──なるほど。最後に、著書には「やりたい放題やって最後には粛清される。その繰り返し」とも書かれています。再び粛清されてしまう恐れはないのでしょうか。

 わかりませんよ、自分のことは(笑)。ただ、このチャンスを逃したくなかった。まさか、「仕事術」というテーマで、週刊文春の編集長に商品価値を認めてもらえるとは考えもしませんでしたし、狙ってもこんなチャンスはやってこない。他にもいろいろな話をいただいていますが、このチャンスを生かして陣地を広げたい。果敢に挑もうと思っています。

 いろいろなことを試してみた経験はデスクや現場の記者が共有しているので、将来に向けての財産になる。また、この5年、われわれが戦ってきた経験の中には、ジャーナリズム全体が生き残る上での大きなヒントがあると思います。

 部員たちには「行けるところまで行こう。見たことのない景色を一緒に見よう」と常に話しています。守りよりも、陣地拡大の方が盛り上がるじゃないですか。私自身、そういう戦いに向いている人間だと思います。リスクを恐れないと言いますか、感じないと言いますか、リスクに鈍感というか(笑)。その点、デスクが敏感ですからうまく成り立っています。

「危ないからやめよう」というよりも「面白いからいこう」と。縮こまってても仕方がない。それが今の「週刊文春」です。私にとってもこの編集長以上に楽しい仕事はありません。今が最高に楽しいです。