小林製薬社長 小林 豊<br />中国市場を医薬品で開拓し<br />グローバル展開を加速させるPhoto by Hiroki Kondo/REAL

──東日本大震災後の市場環境は。

 いくつかの経済指標から判断すると、日本経済の状況は大幅に悪化している。一方、当社の主力製品である日用品・一般医薬品市場は、生活必需品であるため、現時点で大きな落ち込みは見られない。

──2010年3月期まで12期連続で純利益増益を続けている。11年3月期の見通しは。

 さまざまな環境変化があったなかで、ある程度評価されてもいいだろう。ただし、連続増益が目的化すると、将来に悪影響が及ぶ。無理をして続けようとは思わない。

 11年3月期については、楽観はしていない。原材料価格が上昇し仕入れではインフレが進行する一方、小売りではデフレが進む厳しい環境が続いているからだ。

──原材料価格の上昇分を価格に転嫁する可能性はあるか。

 まったく考えていない。あくまでコストダウンなど企業努力でカバーする。原材料価格は、値上げ幅の1割をカットしてもらうべく、調達先と粘り強く交渉しており、必要であれば私を交渉に使いなさい、と現場には言っている。

 今後コストダウンが追いつかなくなる可能性もあるが、量を減らして価格を同じにするようなことはすべきではない。値上げするならば、新しい価値を提案していくことが必要だ。