学校法人「森友学園」(大阪市)が大阪府豊中市の国有地を評価額より大幅に安く取得した問題で、森友学園が小学校の設置認可を求めた申請を取り下げた。学園理事長の籠池泰典氏は、理事長を退任する意向を示したが、国有地売却を巡る「政治家の関与」は否定した。
14億円相当の国有地が実質200万円で売却された不可解な経緯に、政治家の関与があるのではないかと、野党は厳しく追及してきた。森友学園の要望が次々と実現した背景に、政治家の口利きがないというのはあり得ないとする見方が広がる一方で、それを示す確たる証拠は未だに出てきていない。安倍晋三首相は「私と家内、事務所も一切関わっていないと申し上げた。もし関わっていたら私は政治家として責任を取る」と明言している。
本稿は、安倍首相など閣僚級の政治家の関与はなかったのだろうと考える。むしろ「安倍首相に近い」とされる保守系の団体からの強い要求を、財務省が首相の意向を「忖度」して認めていったように思われる。しかし、安倍首相を支持しているとされる保守系の団体が、日本社会で不思議な影響力を持っているとするならば、それは「政治家の口利き」のような単純な話よりも、はるかに根が深く、嫌な問題になってくるのではないだろうか。
地方レベルの「政治家と
保守系団体」の日常の付き合いとは
森友学園と政治家が、実際にどこまで接触していたのかを推測してみるところから始めてみたい。一般的に考えて、日常レベルで様々な接触があったと考えるのが自然だ。日本の地方政治の日常を見れば、運動会など学校行事等に地方政治家や国会議員が、選挙対策として顔を出すのはよく知られていることだ。特に、自民党や維新の会のような「保守」であれば、一応思想的にも近い。塚本幼稚園に顔を出し、「教育方針が素晴らしい」などリップサービスを交えた来賓祝辞もしていた政治家がいたことは、容易に想像できることである。
筆者は、大学のキャンパスが大阪にあるので、大阪の地方自治体・議会と若干なりとも交流がある。そこで、「維新の会」についての話を聞くことがある。ご存じの通り維新の会は、「既得権打破」「二重行政打破」を強く主張したきた。一方、「日本会議」のような、いわゆる「新しい保守」系の団体は、最近までいわば「マイナー」な組織に過ぎなかった。そういう意味で、同じくマイナーな存在同士であった、維新の会の地方議員と接近するのは容易に想像できる話だろう。
維新の会は地方レベルではいろいろなバックグラウンドを持つ議員がいる。自民党から維新に移ったコテコテの「土建屋政治家」の古株議員もいれば、若手には、流行りの言葉でいえば「オルタナ右翼」のようなレベルの議員も少なくないようだ。彼らと「新しい保守」系の団体とは、思想的な親和性もあり、互いに警戒することはほとんどなく、むしろ惹かれ合うように接近していったように思われる。