株式会社日本総合研究所では2009年より「次世代の国づくり」をテーマに活動している。その活動の一環として09年3月より報道関係者を対象とし、政治、雇用、社会保障等に関する勉強会を開催してきた。
今回、ダイヤモンド・オンライン編集部から、マスコミばかりでなくより広い読者層に向けて問題提起を行ったらどうかという提案を受けて、連載を始めることした。本連載は11年度に開催する記者勉強会の内容を基に、日本総研の研究員が次世代の国づくりに向け、多岐にわたるテーマについて提言していく。初回である本回は連載開始にあたり、日本総研副理事長・高橋進が東日本大震災の復興への道筋について提言する。
不可逆的な変化を引き起こした
東日本大震災のインパクト
9.11はアメリカ社会に不可逆的な変化を引き起こしたといわれるが、3.11は被災地だけでなく、日本全体に9.11以上の衝撃を与えつつあるのではないだろうか。
当初、東北地方を襲った地震の報に接した時に頭に浮かんだのは、阪神淡路大震災との比較である。被災地の経済規模が同程度だからである。しかし、時とともに、今回の震災が阪神淡路大震災をはるかに上回る戦後未曽有の災害であり、被災地はもとより、日本全体に不可逆的な影響を及ぼすものであることが分かってきた。
第1に、今回の震災では地震とそれに続く津波によって、多くのまちで人命が失われ、道路や橋といったインフラ、地場産業、行政機能を含むコミュニティ全体が破壊されてしまった。
第2に、防潮堤など防災施設が十分に機能せず、甚大な被害が出た。このため、今後これを修復して、被災したまちを元の場所に復元することが望ましいのかどうか、防災思想の問い直しが必要になっている。