また、緊急事態の線量限界を引き上げる措置は短期的には正しいが、がん誘発の確率的影響を抑えるためには、可能な限り緊急時対応の期間を短くし、子どもの被曝許容量を1ミリシーベルト以下へ下げることが政府の義務である。

 20ミリシーベルトを復旧段階の上限と考えると、現状のような事態が相当長期化すると思われる。その上限値に園児、児童、生徒を何か月も置いておけない。政府は夏休みに再検討するという。できれば3か月後の6月末には学童疎開まで含めた次の対策を打つ必要があろう。もちろん改善すれば状況は変わるが、現状ではなんとも見通しが立たない。対策だけは考えておいたほうがいい。

 郡山市や福島市が校庭の除染(表土を削りだす)作業を始めたのは正しい判断だと思うが、これは東電と政府がやるべきことではないか。削りだした土の搬出先など、市や県の地理的条件を越えて、東電と政府が探すべきである。

 チェルノブイリ原発事故の際、ソ連政府の対応は遅れに遅れ、牧草から牛乳にヨウ素131が混入して子どもの被害者を増やしたが、軍による学校の除染作業は早い段階から行われていた。

 なぜならば、事故の1986年、一般公衆の放射線許容量はICRP1960年基準の5ミリシーベルト/年だったからである。5ミリシーベルトを超えれば除染し、あるいは移住させていた。

 「ICRP2007年勧告」で緊急事態の許容量のバンド(幅)が設定されたため、専門家によってバンドのどこを取るかで意見が割れることになったのである。現在の政府の対策は、安全側ではなく、リスクの大きいポジションを取っているように思える。