1つ目は、「自分の経験を赴任地の言葉で語れるようにしておくこと」。語学というハンデのある海外で赴任者に期待されているのは、現地の人にはない業務経験やノウハウを教える役割です。効果的な指導ができるよう、自身の経験をきちんと語れるよう準備しておくと、スムーズに適応しやすくなります。
2つ目は「配偶者への支援をおこなうこと」です。調査によって、海外における本人の適応は、配偶者の海外適応に大きく影響があることがわかりました。配偶者にまで対応する余裕がない、という企業も多いかもしれませんが、余裕があればぜひ考えていただきたいポイントです。
3つ目は、「海外で一緒に仕事をする人と事前に交流を深めておくこと」です。やはり慣れない異国に渡り、なおかつ、人間関係も一からつくらなければならないとなると、不安も大きいものです。
マレーシアに駐在していたある方のお話によると、「赴任地のマレーシアに行く前に、まず、自分の知り合いや友人がいないかどうかを探しました。また、会社の中で、かつてマレーシアに駐在したことのある人に会って、上司や同僚に関する情報を仕入れたり、連絡をとっておいたりしました」ということでした。
要するに、人間関係づくりを前もって行っていたというわけです。また、「海外赴任者にできることはそう多くないですが、こうした人の縁がものすごく役立ちます」とも。赴任先で折れないように、前任者や取引先なども含め、助けになる人脈をできるだけ早く築いておくことが肝要なようです。
結局、海外赴任者の不適応、「実務担当者 グローバル気枯れモデル」を防ぐためには、赴任前からどれだけ準備を整えておけるか、というところに勝負がかかっている、ということだと思います。
(東京大学大学総合教育研究センター准教授/中原 淳、構成/井上佐保子)